噛み合わせ症候群の原因

     

    噛み合わせ症候群はなぜ起こるのか

    経堂(世田谷区)の歯医者、K.i歯科、噛み合わせ症候群の原因

    当院では噛み合わせ症候群の原因は「あご」の位置の異常であると考えて治療をおこなっています。そして成果をあげています。

    噛み合わせ症候群は、非生理的な「あご」の位置で咀嚼などの機能がおこなわれるために引き起こされています。つまり本来機能をおこなうのには適さない「あご」の位置で機能がおこなわれるために、「あご」の関節や筋肉に無理な負担が強いられるからです。
    つまり普段ものを噛むときの「あご」の位置(習慣性咬合位)が、顎関節や咀嚼筋が健康な機能を営むために都合のいい「あご」の位置(生理的な下顎安静位)と一致していないことが原因です。

    上下の歯が噛み合ったときに、「あご」が安静な位置からズレるかどうかは、ご自身で体験してみていただくと簡単に理解していただけます。
    まず姿勢も正して、目を閉じてみてください。身体の力を抜き、顎の力も抜くようにします。そして上下の唇を軽く合わせた状態で、上下の歯はわずかに(1~2ミリ位)離しておきます。できるだけリラックスして楽な状態をつくります。このときの状態が下顎安静位です。

    つぎにこの状態を維持しながら静かに、なおかつゆっくりと「あご」を閉じていきます。このときには上下の歯を噛み合わせるという意識は捨ててください。 ただ静かに「あご」を上にもち挙げていくという感覚でゆっくりと閉じるようにします。非常にゆっくりと髪の毛一本ぶんずつゆっくりと閉じていきます。
    その時に上下のどこかの歯が軽く接触するのを感じることができると思います。
    そうしたら、そこでそれ以上閉じるのをやめて、どの歯が接触しているのかを自覚してみてください。
    どの歯が最初に接触していますか?

    今度はその状態からすべての他の歯も全部同時のしっかりと噛み合うまで「あご」を閉じていきます。
    このときあなたは次のうちのどの閉じ方で閉じましたか?

    • 最初に接触した歯を頂点として滑るように閉じていき、すべての歯がかみ合うまで閉じていったが、「あご」は最初の所より少し移動した(ズレた)のを感じた。
    • 何度試してみても、最初に当たる歯を自覚することはできずに、すべての歯が同時にかみ合い、「あご」がズレたり移動したりすることが無かった。

    1)に相当する人は、楽にしているときの「あご」の位置(安静位)と歯を噛み合わせたときの「あご」の位置(咬合位)が一致せずに、 噛むたびに「あご」の位置がズレる人です。
    2)に相当する人は、「あご」はズレることなく安静位と咬合位が一致している人です。

    この二つの位置が一致しない人は、下顎が安静で楽な位置から全部の歯が噛み合う位置まで、噛む度に「あご」がズレることになります。
    その位置(咬合位)は「あご」を動かしている筋肉にとって、安静を保てる楽な位置ではなく、長いあいだには筋肉が緊張して疲労や硬直をおこす可能性があります。

    もっともこれだけですべての人が筋肉や顎関節に異常な症状を訴えるわけではありませんが、人間はすべての歯を同時に噛み合わせるということを、1日に2000回以上もおこなっていますので、そのたびに筋肉や顎関節に無理を強いることになります。
    その結果、筋肉や顎関節には破壊的な影響がもたらされます。そのため、嚙み合わせ症候群のほとんどの患者さんは歯を噛みしめるときに違和感を感じています。

     

    噛み合わせ症候群が発症するメカニズム

    このことをもっとわかりやすい例で説明してみます。歯ではなく身体の別の部分で考えるとわかりやすいかもしれません。

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    たとえば片方だけが異常にすり減った靴を履いていたとします。
    このような靴を履いて長い時間歩くと、足のふくらはぎなどの筋肉が普段より疲れたり、痛んだりします。
    ひどい場合には筋肉だけでなく、膝の関節までも痛めることになります。

    原因は、歩く度に足を靴の傾きに合わせてひねったり、曲げたりして調整しながら歩かなければならないからです。
    足の筋肉や関節が普段とは異なる無理な動きをしなければならないために負担が増し、筋肉は緊張して疲労が蓄積していきます。
    筋肉が疲労してくると、膝の関節を保護する働きも弱くなり、やがて関節にも無理な負担が加えられるようになります。
    これは足の筋肉や関節が本来のかたちではない状態(機能をおこなうことに適さない姿勢)で機能をすることを強いられたからです。

    これをふたたび歯の噛み合わせにあてはめて考えてみます。
    靴が片側だけ不均衡にすり減って低くなったということは、歯が片側だけ不均衡にすり減っていることに相当します。(下の図の左側)
    この状態で長く噛んでいると、「アゴ」はすり減って低くなった状態に合わせて、曲げた状態で機能しなければならなくなります。(右側の図)

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    この状態を長く続けていると、「あご」を動かしている筋肉や顎関節は普段と違った動きを強いられるために筋肉が緊張し、血液の循環が悪くなって、筋肉の疲労から痛みを感じるようになります。

    歯がすり減った側の関節は、無理に上下の歯を合わせようとする動きのために、「あご」が傾き、関節頭が限界をこえて上方に移動するために、関節内の構造を圧迫します。その結果、クッションの役割を果たしている関節円盤が飛び出して、いわゆる顎関節症が発症します。

    これが噛み合わせ症候群が発症するメカニズムです。

     

    噛み合わせ症候群は、全身の骨格や姿勢にも影響を及ぼします

    さらにこのことは、頭部の姿勢にも影響します。

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    「あご」が歯のすり減った側に傾いたことは、頭全体の傾きに影響します。その結果、頭を支えている筋肉や頸椎などにも影響し、筋肉痛(肩こりや首筋のこり)などの原因になります。

    その影響が及ぶ範囲は、「あご」の周辺だけにとどまりません。
    「あご」の骨はちょうど頭部と胴体の中間にあって、上下左右から筋肉や靭帯で結ばれています。ものを噛むという動作は咀嚼筋だけではなく、首や肩、頭部の筋肉も参加する協働作業です。
    そのため「あご」の筋肉の異常は頭部や頚部、背中や腰、胸の方の筋肉にまでその影響が及びます。

    人間の重い頭は、7つの骨からなる頸椎の上に微妙なバランスを保って乗っているような構造をしています。
    ちょうど重いボウリングの球が一本の指で支えられているような不安定な構造をしています。それを周囲から無数のゴムバンドのような筋肉で固定しているような状態を想像していただくとわかりやすいかもしれません。

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    重いボウリングの球の下には「あご」がぶら下がっていると思ってください。この「あご」も、重い頭と胴体の間で無数のゴムバンドで上下左右に結ばれています。
    「あご」の位置が少しでもゆがんだり、ズレたりすると、無数のゴムバンドのうちのどれかがゆるんで縮んだりします。それを補うために、他のゴムバンドは伸びたり縮んだりして補わなければなりません。

    このように微妙なバランスの調整は、筋肉とそれを支配している神経の絶妙な協働作業によっておこなわれていると考えられています。この仕組みを神経筋機構(ニューロマスキュラーシステム)と呼んでいます。
    頭蓋骨と胴体の間にある下顎骨の位置は、頭部と胴体の位置関係に重大な影響をもたらしますが、その下顎骨の位置を狂わせるおもな原因は歯の噛み合わせです。

    歯が噛み合うことによってズレてしまった下顎の位置は、頭蓋と胴体、肩、首、などの位置関係を狂わせ、結果としてその間を結んでいる筋肉や神経、靭帯などに異常な緊張や痛みをもたらします。
    これが歯の噛み合わせの異常が全身に波及していくメカニズムです。

    このように「あご」(下顎)のわずかな位置の異常が、ドミノ倒しのように全身の骨格間の位置異常へと波及していくことで、全身の姿勢にも重大な影響が現れます。そしてそれぞれの骨格の間にある筋肉や神経の機能障害やさまざまな不快症状を引き起こしていきます。

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    一般的に正面から見た状態では左右に傾き、肩の高さが左右で異なります。骨盤も左右に傾きます。側面からは首が前傾して"いわゆる猫背・出腹・出尻"になり、お尻と下腹が前後に出た姿勢になります。前後ともS字状にゆがんだ姿勢となり、障害として腰痛などの筋肉症状が出やすくなります。
    「あご」の位置の異常と姿勢の関係は相互に関係し合っています。「あご」の位置の異常が原因となって姿勢が乱れますし、逆に姿勢のゆがみが「あご」の位置を狂わせます。
    そのため「あご」の位置を正す治療では、全身の姿勢に最大限の注意を払っておこなっております。

     

    原因:あご(顎)の位置の異常とは

    当院で治療を受けられる前に、「あご」(下顎)の位置の異常とはどんなことなのかをぜひ理解されたうえで受診していただきたいと思います。そのためには、簡単な「あご」(下顎)の仕組みを理解していただく必要があります。

    「あご」(下顎)は、頭の骨(頭蓋)とは独立した骨(下顎骨)でできています。そして頭の骨(頭蓋)とは、左右の顎の関節(顎関節)と筋肉や腱などによって"ぶらさがる"ように吊り下げられた状態で結び付けられて機能しています。

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    そして上の歯は頭の骨(頭蓋)の一番下側にある上顎骨の上に並んでいて、下の歯は「あご」(下顎)の上に並んでいます。ものを噛むときには「下あご」を動かして頭蓋の下側に並んでいる上の歯に「下あご」の歯をこすりつけるようにして噛みます。

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    「あご」の関節はからだの他の関節とは比べものにならないほど、自由に動かすことができる構造になっています。そのため大きさや硬さなどが異なる食物を自由に咀嚼(そしゃく)することができます。

    ここで問題になっている「下あご」の位置とは、頭の骨(頭蓋)に対する「下あご」の位置のことです。
    頭蓋を固定して考えると下顎はいろんなところに移動することができます。そしてその下顎をいろんなところに動かして、会話や食事をさせているのは"筋肉"の働きです。

    下顎がいろんなところに移動できるといっても限界があります。顎関節が動ける範囲内でしか動けませんし、筋肉が顎を動かせる範囲も限られています。
    そのため、限度をこえて大きく口を開けることもできませんし、長い間硬いものを噛んだりすると筋肉が疲労します。
    つまりあまり異常な位置に顎を動かしたり、異常な位置で硬いものを噛んだりすると、顎関節や咀嚼筋(そしゃくきん)に過剰な負担がおよんで痛めることになります。

    「下あご」(下顎)はかなり自由に動かすことができますが、顎関節や周囲の筋肉に負担かけずに、最適な機能を営むことができる範囲は限られています。その範囲は意外と狭く、その範囲から外れたところで機能をすることを強いられると障害を起こします。
    その範囲を下顎安静位(かがくあんせいい)と呼んでいます。
    この下顎安静位ですべての機能が営まれていれば問題がおこらないのですが、噛み合わせ症候群を患っている患者さんは、下顎安静位ではない(安静が保てない)ところで機能が営まれてします。そのために、顎関節が障害をうけたり、筋肉が異常に緊張したりして筋肉症状が引き起こされています。

    上下の歯が噛み合うときの「あご」の位置を"咬合位"といいますが、この位置は上下の歯がしっかりと隙間なく噛み合うことで、「あご」の位置を厳密に決定しています。このときの「あご」の位置が下顎安静位の範囲内にあれば(一致していれば)問題はないのですが、噛み合わせ症候群の患者さんの場合には一致していません。

    このような状態を"下あご(顎)の位置異常"と呼んでいます。
    この「あご」の位置異常がさまざまな健康障害を起こしていることは疑いようのないことです。
    その証拠に、この顎の位置異常を修正することで、ほとんどの不快症状は消失するか軽減されるからです。
    当院ではこの「あご」の位置異常を修正して、下顎安静位ですべての機能が営まれるよういすることを目的として噛み合わせ症候群の治療を行っています。

     

    顎関節症の原因

    経堂(世田谷区)の歯医者、K.i歯科、顎関節症の原因

    あご(下顎)の位置の異常がもたらす健康障害の中で最も一般的で、苦しんでいる人が多い疾患に顎関節症があります。
    顎関節症の原因は比較的単純で解決に結びつきやすい疾患ですので、あらかじめよく理解しておいていただきたいと思います。

    顎関節症はあごの関節の捻挫が慢性化したような疾患です。ものを噛むときの強大な力によって顎関節が破壊される病気です。
    人間がものを噛むときの力は、その人の体重に匹敵するといわれています。体重60キロの人は60キロの力でものを噛みます。 通常、その力はものを噛むために使われ、顎関節には及ばないのが普通です。しかし、歯がその力を受け止めてくれないような場合には顎関節にその力が向います。顎関節はそのような強大な力に耐えられるような構造には作られていませんので、簡単に破壊されてしまいます。

     

    「あご」の位置異常がある方の例

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    「あご」の位置異常がある人は下顎安静位と咬合位が一致していません。筋肉と顎関節が安静状態にあるときの下顎の位置(下顎安静位)を記録して、上下の歯の噛み合わせを調べてみると、顎関節症の患者さんの場合、写真のように上下の歯は噛み合いません。

    一見不自然に見えますがこれが、これがこの患者さんにとっては楽な位置なのです。この位置だと顎関節も周囲の筋肉も楽で、緊張のない状態になります。

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    ところが同じ患者さんが、食事などのために奥歯を無理に噛み合わせると、下の写真のように噛み合います。
    一見正常でよく噛み合っているように見えますが、この位置(咬合位)でものを噛んでいると、長いあいだには顎関節が痛み、頭痛などさまざまな筋肉症状も出てきて体調不良が起こります。

    下の図は下顎安静位での「あご」の関節の状態を示しています。
    「あご」の関節は正常で関節円盤も正常な状態を示しています。しかし歯の噛み合わせは、奥歯がすいていて噛み合っていません。

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    この患者さんにとってはこの顎の位置が楽な位置(安静位)で、顎関節にも周囲の筋肉にも緊張や不快感を感じていません。
    しかし下の図のように無理に奥歯を噛み合わせると、あごの関節が痛み周囲の筋肉も緊張して不快な症状が出てきます。

    その理由は奥歯のスペースを閉じるように無理に噛み合わせることで、顎関節はそのスペースの分だけ矢印の方向に上に押し上げられてしまうからです。
    その結果、顎関節の内部でクッションの役目をしていた"関節円盤"という大切は"部品"が前方に押し出されます。(ところてん現象)

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    そのために口が開きにくくなったり、開閉の度に音がしたり、硬いものを噛むと痛くて噛めなかったりするようになります。

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    上の図はその状態を分かりやすく示した模式図で、右の図は実際のCT画像です。
    関節円盤という組織が前方に移動していることが見ていただけると思います。

    これが顎関節症の実態で、顎の位置の異常が原因で起こっています。その位置異常は奥歯の噛み合わせが低いことが原因です。奥歯が噛む力を十分に支えてくれないために、顎関節に過剰で暴力的な力が加えられてしまいます。その結果顎関節内部の構造が破壊されてしまうのです。

    下の図は正常な顎関節の構造です。左は口閉じている時、右は口を開いている時のものです。

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    下の図は関節円盤の前方転移を起こしている顎関節の図です。
    左の図は前方転移が起こった直後のもので、右の図は病態が進行して関節円盤が変性を起こしてしまった状態のものです。

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    このような状態を放置しておくと、やがて関節円盤の一部に穴があいてクッションの役目をしなくなり、骨と骨が直接接するようになります。それと同時に骨の形そのものも変形してしまうこともあります。
    そうならないためには「あご」の位置異常を改善して顎関節に過剰な力が及ばないようにしなければなりません。

    それには正しい診断が不可欠です。この場合の診断とは「あご」の位置異常の有無とその程度を調べることです。それにはいくら口の中を覗いてみても判断することはできません。とくに上下の歯を噛み合わせた状態をいくら観察しても何もわかりません。
    噛み合わせを調べるために、咬合紙を用いて、上下の歯の接触状態を調べることがよくおこなわれていますが、この場合にはほとんど無意味で正しい診断にはまったく結び付きません。原因は"歯の接触状態"とはほとんど関係がないところにあるからです。

    正しい診断のために最も大切なことは、下顎を安静位に導いてそのときの「あご」の位置(安静位)を記録することです。そこで初めて下顎安静位と咬合位との差を知ることができます。
    ほとんどの医療機関で顎関節症を正しく診断して治療することができないのは、このような考え方と技術に対する理解がないからです。

     

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