噛み合わせの検査と診断
- 低周波 TENS
- 下顎運動記録装置 CMS
- 筋電図 ELECTROMYOGRAPHY
- 顎関節音記録 ELECTROSONOGRAPHY
- レントゲン診断 RADIOGRAPHY
- 健康で美しく、快適な生活をおくるために、なくてはならないものは健全で生理的な噛み合わせです。
- そのような噛み合わせを得るためには、噛み合わせの状態を客観的に評価して、生理的で健全なものと病的なものを区別しなければなりません。
- 現代の最先端の科学技術を駆使してつくられたこれらの診断機器を使いこなすことで、そのような最適な噛み合わせを得ることができます。
- 勘や根拠のない思い込みによっておこなわれる歯科治療ほど危険なものはありません。
- これらの診断機器を使いこなす能力と訓練を受けた歯科医師だけが、快適は咀嚼器官と全身の健康をつくり上げることができます。
- 下顎運動追跡記録装置 CMS
- 表面電極筋電図 EMG
- 顎関節音記録装置 ESG
- 超低周波TENS
治療を成功に導くためには、正しい診断が必要です。
当院の治療が成果を収めている理由は、原因を正確に把握し客観的なデータに基づいて診断を行い、それに沿って正確な治療をおこなっているからです。
噛み合わせ症候群は、ものを噛んでいるときの顎の位置(歯が合う位置)と、本来の顎の位置(顎が楽な位置)が一致していないことが主な原因です。治療はその二つの顎の位置(咬合位と安静位)を一致させることを目的として行われ、問題点の改善につなげます。
正しい診断のためにはこの二つの顎の位置が、どの位ずれているのかを正確に知る必要があります。
この二つの顎の位置のずれの大きさは、1ミリの何分の1という場合もあります。そのずれを正確に測定して客観的に記録し比較するためには、肉眼よりも高度なテクノロジーの力を借りるべきなのです。
総合的な診断のために、下顎の位置を測定する装置(CMS)だけでなく、筋肉の状態を知るための筋電計(EMG)などが使われています。
最新の診断機器による診断と治療
データに基づいた医療を行うためには科学的な診査機器の助けが必要です。
肉眼では確認できないものを"可視化する"ことが大切です。
かみ合わせ治療の診断と治療には、最新の科学テクノロジーを駆使した診断機器が用いられています。
その診断システムを総称して、K7 Evaluation Systemとよんでいます。
K7 Evaluation System
K7 Evaluation Systemには、つぎのような診断機器がふくまれます。
K7 Evaluation Systemには15種類の検査があります。ここではそのうちの10のScan(検査)をとりあげます。
それぞれの検査をScan(スキャン)といいます。
Scan(スキャン)には、走査する、精査する、細かく調べるという意味があります。
日常の臨床でよく使われるのは次のようなScan(スキャン)です。
CMSによるScan(検査)
Scan1 |
顎の開閉運動の検査 |
Scan2 |
顎の開閉運動の速度 |
Scan3 |
顎の安静状態の検査 |
Scan4・5 |
安静位と咬合位の比較 |
Scan6 |
嚥下と舌の関係 |
Scan7 |
咀嚼運動の検査 |
Scan13 |
顎の運動範囲、限界運動の検査 |
EMGによるScan(検査)
Scan9 |
TENS前の筋の安静度の検査 |
Scan10 |
TEMS後の筋の安静度の検査 |
Scan11 |
機能(かみ締め)時の筋電図検査 |
Scan12 |
筋の発火のタイミングと歯の接触 |
図は良く使うScan(検査)の画面です。
人類は肉眼では見えないものを可視化することで、知見を拡大してきました。
天文学の望遠鏡や細菌学の顕微鏡の出現はそれぞれの学問分野を創り出し、人類にはかり知れない恩恵をもたらしました。
噛み合わせの治療もこれらの機器が開発されたことで病理的な解明が進み、診断と治療法を確立することができました。
→K7 Evaluation Systemについて、さらに詳しい情報はこちら
顎の位置を調べる
今から40年も前にこの目的のための計測機器が開発されました。そして一部の臨床家の間で使用されてきて、度々の改良を加えられながら今日にいたっています。
下の写真は、7回目の改良の結果現在使われている、K-7という検査機器です。
この装置を使うと、口の中をのぞかなくても、歯を噛み合わせているときの顎の位置と安静にしているときの顎の位置を、コンピュータの画面の上で比較することができます。
この装置ができたおかげで、噛み合わせ症候群の診断と治療は飛躍的に進歩しました。
初めて科学的で客観的なデータにもとづいた診断と治療ができるようになったのです。
噛み合わせ症候群の診断と治療は、顎の楽な位置、すなわち下顎安静位を基準にしています。診断はそこからの距離を測ることであり、治療はその位置で機能ができるようにすることです。
下顎安静位は筋肉が安静であること大切な基準ですが、そのためには筋肉が安静であるかどうかが証明されなければなりません。そのために開発されたのが、歯科用の筋電計です。
筋肉の状態を調べる筋電計
この装置を使うと心臓の状態を調べるために心電計が使われるように、咀嚼筋の状態を調べることができます。
この筋電計はおもに筋肉の安静状態を調べるために使いますが、そのほかにも、筋肉が正常に機能するかどうかを調べることができます。
写真は筋電計で電極を用いて筋肉の状態を調べているところです。
噛み合せ症候群の診断のポイントは、安静位と咬合位の関係を調べることです。
安静位を調べて記録するためには、筋肉が安静状態でなければならないのですが、もし十分に安静状態でない場合にはできるだけ安静常態に導く必要があります。そのためには低周波治療器を使います。
通常は「あごの力を抜いて楽にしてください」とお願いすればほとんどの場合、「あご」の筋肉は安静状態になるのですが、噛み合せ症候群が進んで筋肉が硬直している場合には簡単に安静状態になりません。
顎を支えている筋肉のうちで一つでも安静ではなく硬直した状態の筋肉があると、そのために顎の位置がかたより、本当の意味での安静位が記録できない場合がでてきます。
顎を安静位の導く方法
筋肉の緊張状態を解きほぐして安静状態に導くためには、低周波治療器の一種であるTENSという装置を使います。
検査する前にこの装置を約60分ほど使用して、筋肉のリラクゼーションをはかります。
TENSを使用する前に筋電計をもちいて筋肉の安静の度合いを計測しておき、使用後に再び計測して筋肉の安静状態を確認します。
筋肉も関節も完全にリラックスした状態を確認した上で下顎の安静位を計測して記録します。 咬合位の計測は普段いつも噛んでいる状態で噛んでもらい、そのままの状態を記録します。
→噛み合わせ治療の成功の鍵を握る「TENS」について、詳しくはこちら
二つの「あご」の位置の差を表示する
K-7(顎運動計測記録装置)の画面上に二つ「あご」の位置を教示して比較します。下の図はその画面を示しています。
図の左半分は「あご」を横から観察している図で、右半分は前から見ているところを表しています。 | 右のデータの図解です |
このデータは噛み合せ症候群の重い症状をもっている患者さんのものですが、「あご」の力を抜いてリラックスした時の「あご」の位置と歯を噛み合せたときの「あご」の位置を示しています。ご覧のように二つの「あご」の位置は一致していません。
前後的に3.8ミリ安静位咬合位は後方にずれていることがわかります。さらに2.8ミリ低位咬合になっていることもわかります。
前方から見たデータでは上下方向の位置は一致していませんが、左右方向のずれはないことがわかります。
下の写真はそのときの患者さんの下顎の状態です。(下顎安静位)
これは同じ患者さんが普段ものを噛むときのように、上下の歯を噛み合せているときの状態です。(咬合位) | 一見よく噛めているようで問題はなさそうなのですが、この患者さんはこのように噛み合せると顎や関節に無理な緊張を感じ、長く噛んでいると頭痛や首、肩、関節などの部位に不快感や痛みを感じるようになります。 |