噛み合わせ症候群(顎関節症を含む)の治療
- 補綴的咬合再構成
- 矯正的咬合再構成
- 外科的咬合再構成
- 下顎の安静位が正確に探し当てられていること
- そのためにはTENSを使用して不随意的な筋収縮を利用すること
- 下顎と頭蓋の位置関係が正されてること
- 下顎に安定したホームポジションを提供して筋肉を安静にしていること
- 下顎の位置は客観的なデータで評価されていること
- オーソティックの調整はTENSを使って不随意的な筋収縮を利用しておこなうこと
噛み合わせの検査と診断 目次
噛み合わせ症候群(顎関節症を含む)の治療
一次治療と二次治療
顎関節やあごの筋肉の緊張を和らげる治療効果が高い「オーソティック」とは
噛み合わせ症候群(顎関節症を含む)の治療
噛み合せ症候群(顎関節症を含む)の治療の目的は、「あご」が楽な位置で上下の歯が噛み合うようにすることです。(何だ、たったそれだけかと思われるかも知れませんが、実際にはかなり複雑な治療です。なぜなら、「あご」が楽な位置を的確に見つけて、維持する必要があるからです。)
「あごが楽な位置」とは、顎関節と筋肉がリラックスした(生理的に安静状態にある)ときの「あご」の位置のことです。
この位置のことを専門用語では「生理的下顎安静位」いいます。
噛み合せ症候群(顎関節症を含む)は、この生理的下顎安静位で上下の歯が噛み合わずに、噛むたびに顎がズレることから起こる病気です。
そのため治療の第一歩は、上下の歯が噛み合うときに顎がズレないで生理的下顎安静位にとどまるようにすることです。
そのために、「オーソティック」という樹脂製の器具を上下の歯の間に装着していただきます。
オーソティックを装着することで「あご」は常に下顎安静位に保たれて、顎関節や筋肉を護ります。
また、すでに破壊されて障害をうけている組織を安静に保って回復することを助けます。
上の写真は、「オーソティック」とそれを装着したところを示しています。
オーソティックは、上の写真のように下の歯に被せるようにして使用します。夜間就寝時に使用していただきますが、できるだけ長時間使用していただく方が効果があります。
このようにして安静状態を保つことで、破壊されて関節や緊張した筋肉が修復されていき、正常な状態に戻ることができます。それに伴って、症状が緩和されていきます。
症状が緩和されて快方に向かい、さらに筋電計などのデータも同様に変化したならば、この治療法の正しさが証明されます。ここまでをこの治療法の一段階とみなします。
しかし問題はその後です。オーソティックを使用していると顎の位置が修正されて症状は快方に向かうのですが、オーソティックを外すと元の位置に戻りますので、症状が再発します。
オーソティックを外しても再発しないようにするためには、オーソティックを使わなくても下顎安静位の「あご」の位置が維持されるようにしなければなりません。そのためには現在ある元の歯の噛み合わせを変更して、オーソティックなしで下顎安静位が保てるようにしなければなりません。
この段階の治療が終了した段階ではじめて、噛み合わせ症候群の治療は終わったことになります。
一次治療と二次治療
オーソティックを使って、辛い症状がとれるまでの治療を一次治療としています。二次治療は一次治療で効果が確認された「あご」の位置をオーソティックの代わりにご自分の歯で維持できるように、現在の歯の位置もしくは形を変更する治療のことです。
一次治療はオーソシスを使って正しい「あご」の位置をテストしながら症状が緩和する位置を求める治療です。そして完全に症状が緩和したことが確認されたならば、そのときの「あご」の位置は健康を維持するために大切な位置であることがわかります。
このような試行錯誤の段階を経たうえではじめて、どのように現在の歯を治療すればよいかを決定することができます。そうすることで無駄な治療をしないで済ませることができます。
二次治療でおこなわれる治療は「あご」の位置関係をつくり直す治療なので、「咬合再構成治療」といいます。
これには次のような方法があります。
1)補綴的咬合再構成
元の歯に詰め物や被せ物をして歯の形を変更し、顎の位置を下顎安静位に変更する方法です。
2)矯正的咬合再構成
歯を削ったり被せたりしないで、歯を移動させてあごの位置を変更する方法です。
3)外科的咬合再構成
外科的咬合再構成は、歯の移動や形態の変更では咬合を再構成(顎位の一致)出来ない場合におこなわれます。
顎骨を切断してずれを修正します。
当院ではまだ経験していません。
顎関節やあごの筋肉の緊張を和らげる治療効果が高いオーソシスとは
上の三つの写真は同じ患者さんの写真ですが、左からいつものように噛んでいる時の状態、中央は顎の力を抜いた時の下あごの位置、右はその状態をオーソティック(副木)で支えているところを示しています(イメージ)。
①は普通に噛んでいるときの噛み合わせの様子を示しているものですが、習慣性咬合位と呼んでいます。この状態では歯はよく噛み合っているように見えますが、下顎と頭蓋との位置関係が必ずしも正しい関係になっているかどうかは分かりません。
この時点でかみ合わせ症候群の症状のうちのどれかを訴えているような場合には、下顎と頭蓋の位置関係を調べてみる必要があります。
そのためには「噛み合わせ」からの悪い影響を受けないようにするために歯を接触させない状態で顎の力を抜き( ②の下顎安静位 )頭蓋との位置関係を調べます。この位置は「噛み合わせ」からの影響から解放された筋肉だけの力で維持されている位置です。この「あご」の位置は筋肉が緊張していない状態で筋肉が決めた位置なので、この位置を維持することができれば「あご」の周辺の筋肉は緊張はとれて緩和されます。
この位置で下顎ををオーソティックで固定してやると筋肉は安定して緊張しません。このときの「あご」の位置は下顎と頭蓋の位置関係が正常になっていることが多く、この位置を維持することができれば、筋肉や顎関節の緊張が取れて症状は消えていきます。
治療効果の高いオーソティックとは?
下顎の位置と筋肉の緊張状態を客観的に評価するための装置
術者のカンや肉眼だけに頼るのではなく科学的な手段を駆使することで確実な効果が得られます。