その頭痛、もしかしたら噛み合わせが原因?

      2023/08/05

ある種の頭痛は噛み合わせを治すことで解消できることをご存知でしたか?
ある種の頭痛とは頭の周囲の筋肉が緊張しておこる緊張型の頭痛のことです。
頭の周囲の筋肉が緊張するときには、始めに「下あご」を動かすための筋肉が緊張します。
「下あご」に付く筋肉は噛み合わせの不具合で「下あご」の位置がずれることで、バランスを取ろうとして緊張します。
そのため噛み合わせを治して「下あご」の位置を元に戻してやれば「下あご」の筋肉の緊張がとれて頭痛が無くなるのです。

 

歯並びの良し悪しによらず、噛み合わせが悪いと頭痛がおこるのは何故か?

1-1.頭痛の種類と症状

「頭痛」で悩む方が多いことは厚生労働省の調査からも明らかになっています。
頭痛といっても、その原因はさまざまで、治療法はそれぞれで異なります。
頭痛には脳の血管が広がって痛む「片頭痛」、頭の周りの筋肉が緊張して痛む「緊張型頭痛」などがあります。
脈打つように痛み、吐き気もともなう「片頭痛」と頭全体が締め付けられるように痛い「緊張型頭痛」というように区別することができます。
「片頭痛がおこる直前には肩こりがでることもあり、こめかみから目のあたりがズキンズキンと心臓の拍動に合わせるように痛みます。
その他にも片頭痛よりもさらに激烈な痛みを呈する「群発頭痛」があります。その痛みは「ドリルで目の奥をえぐられるような」と表現されるほどで、QOLの低下は片頭痛よりもさらに深刻です。
これらの3種類の頭痛のなかで、噛み合わせと深く関わっているのは「緊張型の頭痛」です。

​​​​​​頭痛の7割ほどを占める筋緊張型の頭痛は肩や頭の周りの筋肉が緊張して硬直することでおこります。
緊張型頭痛の多くは肩こりや首すじのこりと同時に現れます。肩から頭の後ろ、てっぺんあたりにかけてズキズキ痛みます。
そのため「肩こり頭痛」「筋収縮性頭痛」とも呼ばれることもあります。
緊張型の頭痛の特徴は頭を締め付けられるような痛みで持続的に表れます。
「ヘルメットをかぶったような圧迫感」、「はちまきで強くしめ付けられるような痛み」と表現されることもあります。

次の症状がある方は緊張型頭痛がおこる可能性が高いと考えられています。

  • 肩や首筋が凝りやすい
  • コンピュータやスマホに向かうことが多い
  • 根を詰める仕事が多い
  • 目が疲れることが多い
  • 運動不足である
  • 肩こりと首筋のこり、頭痛とが一緒にくる
  • ギリギリと頭をしめつけられるような痛みがある
  • だらだらと痛みが続く
  • 軽い運動、入浴、などで頭痛が楽になる

 

1-2.噛み合わせに問題があると「下あご」に付く筋肉が緊張するために頭痛がおこる

肩や頭の周囲の筋肉が過度に緊張するときに緊張型の頭痛がおこります。特に側頭筋というこめかみ近くの筋肉に強い緊張がつづくとしめつけられるような頭痛がおきます。このとき側頭筋に何がおこっているかといえば、噛み合わせの不具合によって側頭筋が絶えず「下あご」に位置を調整しようとして緊張が続き激しいこりの症状がおこってしまっているのです。側頭筋による緊張性の頭痛はこのようにしておこるのです。
別の例では肩の筋肉を使いすぎたときや、悪い姿勢を長時間続けたり精神的なストレスが続いたときにも肩の筋肉が緊張して凝ることはよく知られています。
緊張型の頭痛はそのときに同時におこるといわれています。
IT全盛の今、私たちはモニターを見る時間が増えつづけています。
モニターを良くない姿勢で見続けると、肩や首筋の筋肉の血行がとどこおり、それらの筋肉がこったり痛んだりする方が多くいます。
そのようなとき、仕事を減らしたり、運動やマッサージをすることでいくらかは軽減できるかもしれません。
しかし次の段階では、いくら休養を取っても、マッサージや整体治療などをしても回復が望めなくなることがあります。そして再発をくり返していると慢性化してしまうことも考えられます。そうなると問題は深刻になります。肩こりや頭痛だけではなく、全身の倦怠感、自律神経の不調からくる原因不明の体調不良や気分の落ち込みなども併発することがあります。
このように生活にも重大な支障をきたすようになれば、関連するであろう医療機関を受診して解決策を探らざるを得なくなります。

しかし現代医学ではこのような患者さんを救うことは容易ではありません。なぜなら症状別に細かく分析しても原因となっている本質にたどり着くことが困難だからです。このような症状群に対しては、身体という複雑なシステムの不調とみなして対処するという方向で立ち向かうことが必要になります。

ですから、薬物療法に頼っても根本的な治癒を期待することはできません。
筋肉の緊張を和らげるための手段があってもそれが効果的に使われていないという現実があります。
筋肉の緊張を和らげることができれば肩こりも緊張型の頭痛も治せるはずですが、現状では筋肉の緊張を緩和するという手段は用いられて来ませんでした。
そのような方向で治療しようとする発想がなかったためです。
筋肉の緊張を和らげる方法は歯科では低周波TENSという機器によって実用化されています。
今から50年以上前に米国の優秀な歯科医が筋肉の研究をしている過程で筋肉の緊張を緩和する手段を開発していました。
ある種の電気刺激を三叉神経に与えることによって咀嚼筋の緊張を緩和する方法を見つけました。
さらに咀嚼筋の緊張を緩和するとその周辺の筋肉の緊張も緩和することが分かりました。
その結果ある種の噛み合わせの異常が咀嚼筋を緊張させることもわかり、噛み合わせのずれやねじれを修正すると咀嚼筋やその周辺の筋肉の緊張も緩和することが解明されました。
歯科と関連が少ない疾患であると考えられていた肩こりや緊張型の頭痛も歯科的なアプローチで治療が可能になったのです。
しかし、肩こりや緊張型の頭痛の問題に正面から取り組む医療者は少数派であることも事実です。

 

1-3.筋肉の緊張を和らげることができれば頭痛はよくなる

肩や首筋、頭の周りの筋肉は「下あご」の筋肉が緊張すると誘発されます。「下あご」の筋肉は肩や首、頭の周りの筋肉と密接につながり一体化しているからです。
首や肩の筋肉は「あご」の筋肉と密接に繋がっていて一体化しているために「下あご」の筋肉が緊張すると首や肩の筋肉も同時に緊張して痛みだします。
そのために噛み合わせを治して「あご」の筋肉を緊張させないようにすると肩こりと頭痛は同時に解消します。
「あご」の筋肉を緊張させるのは悪い噛み合わせです。
そのため悪い噛み合わせを治して、「下あご」の筋肉が緊張しないようにすることができれば肩こりと頭痛はほぼ同時になくなります。

 

嚙合わせが悪いためにおこる頭痛の症状

2-1.噛み合わせが悪い人が普段感じている違和感

ご自分か苦しんでいる頭痛が噛み合わせのせいであるといわれても、にわかには信じてもらえないかもしれません。
ご自分が感じているしつこい頭痛がはたして噛み合わせと関係しているのかを知るためには、次のような違和感を感じておられるかどうかを知ることは参考になります。

噛み合わせの悪い人は次のような違和感を感じています。

  • 噛み合わせがしっくりしない
  • 噛み合わせが合わない
  • どこで噛んでよいか分からない
  • 噛んだあと「あご」が疲れる
  • 「あご」の位置が定まらない
  • 自分が噛みたいところで噛めない
  • 前歯が先に当たって奥歯で噛みにくい
  • たくさん噛んだあとで頭痛がおこりやすい
  • 身体にいつも力が入っている
  • 「あご」が曲がっていると思う
  • 口を開くときに曲がって開く
  • 顎関節症の既往がある
  • 歯列矯正後の違和感

 

2-2.しつこい頭痛で苦しめられている人々

ここである悩み相談サイトに寄せられた頭痛で苦しんでいる人々の実例をご紹介します。

★症例1.

頭痛に悩まされています。原因不明です。
6年程前から頭痛に悩まされ、病院を転々としていますが、原因不明です。
8ヶ月程前に激しい頭痛に襲われ、身動きが取れず、救急車で運ばれましたが、異常ありませんでした。
その後もときどき頭痛に襲われましたが、身動きが取れないほどの頭痛はありませんでした。そして、4ヶ月程前に再び激しい頭痛に襲われ、病院へ行くと、CTでは脳梗塞と診断されましたが、MRIでは異常なしと診断されました。
なので、検査入院をし、精密検査をしましたが、異常なしでしたが、ミトコンドリアという病気か脳梗塞の可能性があると言われました。

ミトコンドリアの可能性がある理由としては、頭痛が起こるといつも左半身に障害が出ます。
また、脳梗塞と思われる理由としては、CT検査で見つかった位置と症状が完全に一致しているからだそうです。
今日、勤務中に頭痛に襲われ、めまい、吐き気、指先の痙攣、言語障害という症状が出ました。
そして、何度が嘔吐しました。

激しい頭痛の時、特徴があります。
最初は軽い頭痛、段々痛みが増す、痛みが広範囲になってくる
ズキ1 ズキ2 ズキ3 と、前、真ん中、後ろという感じに部分的に痛みが出ます。
ある時、強い痛みがズキっと一度来て、スーッと痛みが和らぎます。
そして、再びズキ1 ズキ2 ズキ3と、前、真ん中、後ろという感じに部分的に痛みが出ます。
その後、再び強い痛み。広範囲の痛み、部分的な痛みといったばらつき感が出てきて、早い時は2時間程度。遅い時は3日程度で痛みが和らぎます。

病院に行っても「原因不明です」「とりあえず、痛み止めと痙攣止めを飲んでください」としか言われません。
偏頭痛の可能性はあるのかと聞いても偏頭痛ではないと、言われました。
何が原因なのか全くわかりません。

 

★症例2.

顎関節症?緊張型頭痛?頭・首が痛いです。
主な症状として、口を開くと明らかに骨がガクガク動いてるのがわかり痛む・こめかみが痛む・「あご」が痛む・耳がつまった感じがする・耳の前後が痛む・頬骨が痛む、このことから顎関節症のせいかな?と思っていました。
ですが他にも症状があり、目の奥が痛む・首が痛む(特に後頸部の付け根)・頭蓋骨が締め付けられる感じ
最初に述べた症状と上記の症状は、お風呂に入ると少し良くなります。
自分で調べてみると緊張型頭痛というのも当てはまる…?と色々考えてわからなくなりました。
今日はどうしても全体が痛かったのでイブを飲みました。
一時的によくなりました。病院に行くにも、口腔外科なのか内科なのか、分からず困っています。
ちなみに、自分での判断ですが、骨盤後傾とストレートネックだと思います。
ストレートネックは、首を打ってレントゲンをとった時に医師に言われました。
どういう状況なのでしょうか… よろしくお願いします。

 

★症例3.

締め付けられるような頭痛、吐き気、めまい、耳鳴りという症状があり、病院へ行ったのですが『ただの風邪』と診断されました。
薬を出されて毎日きちんと飲んでいるのですが一向に良くなりません。
原因は何なのでしょう。
詳しい方、経験した方よろしくお願いします。

 

★症例4.

片頭痛と緊張型頭痛の複合型だと思うのですが、ここ1年程で頭痛が頻繁に起こるようになってしまいました。
基本的に仕事中になり、一度なると寝るまで治らないため悪化して吐き気がして早退を繰り返してます。
吐き気というより実際吐いています。
肩こりや首こり?がひどいですが、頭痛の始まりそうな時に肩こりの体操などをしたら頭がクラクラして逆に気持ち悪くなりました。
同じような頭痛で苦しんでる方、どのように対策しているか教えてください。

 

★ 症例5

頭痛が治りません。
私は高校二年生なのですが、1週間ほど前から頭痛がします。
頭の中心が痛くて、立っているとさらに痛みが増します。
立ちくらみも酷く、寝ていたり座っていたりしたあと立ち上がると一瞬頭の中心が普段よりも強く痛み、目の前が真っ暗になり吐き気もします。(吐き気はしますが嘔吐しません)
今吐きそう!となってトイレに駆け込みますが、暫く座り込んでいると徐々に吐き気が引いてきます。
体育の授業とかで走ると、そのあと気持ち悪くて次の授業ではずっと机に突っ伏してます。
普段の生活にストレスは感じていませんし、学校も楽しいです。
なのでストレスから来る頭痛ではないと思うのですが、心配です。
この頭痛や立ちくらみはなにか病気でしょうか?

 

★症例6

頭痛について
目の奥、顎の付け根辺りが同時に痛みます。
痛くなるのは片側側で、両側が同時に痛くなることはありません。比較的右側が痛くなることが多いです。
ひどいときは3日ほど鈍痛が続き、動きたくないほど痛くなる時もあります。吐き気もあり過去に嘔吐したこともあります。
市販薬(ロキソニンなど)も一切効きません。
20代後半女性、子持ち。仕事はパート。頭痛は20代前半から毎月最低1回は頭痛がでます。
頭痛外来に行きCTを撮ってもらいましたが異常なし。片頭痛と診断され漢方と薬を毎日飲んでいますがあまり効果はありません。
頭痛薬に漢方を処方されましたがこちらもあまり効果がありません。
耳のした、顎の付け根が痛むので顎関節症の可能性も疑っています。
口を大きく開けることに痛みはありません。指を縦にして3本綺麗に入ります。
ですが物を噛むときにカクカク音がします。就寝時歯ぎしりもあります。
顎関節症場合は、同時に目の奥が痛むことはあるのでしょうか?または別の病気なのでしょうか?
同じ症状の方がいれば教えていただけばと思います。
この質問は、活躍中のチエリアン・専門家に回答をリクエストしています。

ベストアンサーに選ばれた筆者の回答

嚙み合わせの異常と顎関節症や頭痛などの身体の不調との関係について興味をもち治療をしてきた歯科医です。
頭痛外来で片頭痛と診断されたということです。病名が分かっても根本的な治療法がなく、鎮痛剤を処方するという対処法がなされたのであれば、これは現代医学の不得意とする分野といえるかもしれません。
毎月1回は頭痛がおこり、鈍痛が3日間も続いて吐き気もあり、そのために身体を動かすことが億劫になり、倦怠感に見舞われるというようなことが長年にわたって繰り返されてきたということですが、その辛さをお察しします。
その上唯一の対処法としての薬物療法も効果がなく、将来について悲観的になられてしまいました。
しかし、内科的な治療法で効果がでなかったとしても、その他の対処法がないというわけではありません。
片頭痛や緊張型の頭痛といったようなある種の頭痛(群発性頭痛を除く)は、顎関節症に随伴しておこることが知られています。顎関節症を治せば頭痛も一緒に解消することが少なくないのです。
耳の下、「あご」の付け根が痛むということですので、たとえ十分に開口ができてもこれは顎関節症に特有の症状です。
さらに目の奥が痛むというということも、顎関節症にともなった症状の一つです。
これらの症状は顎関節症に加えてその周辺の筋肉が緊張することが原因で起こります。そのとき、筋肉が緊張する最大の原因は、歯のかみ合わせによって「下あご」が無理な位置にずれてしまい、「下あご」に付く筋肉と対立する関係がつくられたためです。
歯を嚙み合わせたとき、「下あご」の位置が本来あるべき位置からずれてしまうと、「下あご」に付く多数の筋肉のバランスが崩れ、関連した筋肉が変化した「下あご」の位置に適応するために異常な動き方をすることになります。その結果、筋肉が絶えず緊張状態となり、ついには疲労・硬直してしまいます。
すると、「下あご」の筋肉や首筋の筋肉、肩の筋肉などが「こり」を覚えるようになります。さらに、こめかみや側頭部、後頭部などの頭を取り巻く筋肉も緊張して硬直する場合もあります。緊張して硬直した筋肉は血行不良となり、不快感や疼痛を感じるようになります。
筋肉内の血流が悪くなると、筋肉の中の乳酸などの老廃物を排出できないうえに、新たな酸素や栄養などの供給が滞るために不快感が生じます。それが頭全体が締め付けられるような鈍い痛みとして感じられる原因です。まるで鉢巻きで締め付けられたように不快であるといわれています。予防法は、できるだけストレスをためないようにしてリラックスすることと、首や肩を動かすような運動をして血液の循環を良くすることです。
ここからは、先ほどの別の対処法についてのご説明となります。歯科における効果的な対処法として、「下あご」の位置を筋肉の安静が得られる位置(下顎安静位)に戻すことを目的とした治療法があります。そのためには現状の歯で嚙み合わせた「下あご」の位置(習慣性咬合位)と、「下あご」が安静になる位置(下顎安静位)の差を測定して、下顎安静位を維持するためのマウスピース(オーソティック)を装着してもらいます。早ければ数日で効果が表れて、顎関節症や首肩のこり、頭痛、自律神経失調症に類する症状、無気力感などのTMDの症状が改善されます。
現状では、この考え方に沿った治療はあまり普及していません。なぜなら、筋電図をはじめとする歯科では馴染みのないデータ群を、同時に複数モニタリングして「下あご」の動き方の問題点を探る治療は、マスターするために多大な努力が必要だからです。
ここに書かれている事がらは、多くの方は初めてお知りになったかもしれません。ところが、この考え方と治療法は50年も前に米国の優れた歯科医によって確立されています。今でも一定数の臨床家に支持され続け、世界中で実践されています。

嚙合わせによる頭痛の原因

3-1.緊張型頭痛を引き起こす悪い噛み合わせとは

肩こりや緊張型頭痛を引き起こす良くない噛み合わせとは「あご」の筋肉を緊張させる噛み合わせのことです。
正常な噛み合わせは決して「あご」の筋肉を緊張させません。「あご」の筋肉が緊張しなければ肩こりや頭痛は解消されます。

ものを噛むために使われている「下あご」の筋肉は非常に強力な筋肉で、ものを噛む力はその人の体重に匹敵するといわれています。
また硬さや大きさが異なる食物を咀嚼するためには微妙なコントロールが可能で、非常に繊細にできています。
歯は食物を噛み砕いたり、すり潰したりするために使われる道具と考えてみます。道具である歯の形や位置関係が「下あご」を動かす筋肉とうまく調和していないと、それらの筋肉はしなくてもよい調整をし続けて緊張し、疲労します。 これが歯の噛み合わせが悪いいことによって「あご」の筋肉が緊張したり疲労したりする理由です。

「下あご」を動かす筋肉が無理なく機能するような「噛み合わせ」の条件が整っていれば、筋肉は緊張したり疲労しないで安静な状態を保つことができます。
ちょうど、ピアノを引く前にピアノとの距離や位置関係を微妙に調整しないと上手に演奏できません。咀嚼する道具である歯とそれを動かす筋肉との関係も同じように考えてみます。すると、ピアノの場合とは異なり、歯と筋肉との位置関係は固定されていて変えることはできません。つまり、自分の意思で微調整することはできないのです。悪い「嚙み合わせ」が問題となるのはこのためなのです。
筋肉は非常に繊細な組織なのでわずかな位置条件の変化にも反応して微調整を繰り返しています。
その調整のための負担が筋肉が適応できる範囲をこえると筋肉は疲労して反応しなくなり硬く固まった状態になります。これが筋肉が「こる」といわれれている状態です。これは筋肉の緊張が長時間続いた結果おこる筋肉の攣縮(れんしゅく)といわれている状態です。筋肉の中では血液の循環が停止して酸素や栄養補給が滞り、老廃物を排出することができなった状態です。
そうすると筋肉は排出されなかったアンモニアやピルビン酸などの老廃物のために痛みなどの不快感を感じるようになり、痛みをもたらします。

基本的に骨格と骨格との間にある筋肉(骨格筋)は骨格同志の間の位置関係が不適切であると、正常に機能しづらくなり緊張します。
姿勢が悪いと肩こりなどの筋肉痛がおこるのはそのためです。姿勢が悪いというのは骨格間の位置関係が正常な関係から外れているということだからです。
噛み合わせが悪いというのは、基本的には「下あご」と頭蓋という骨格の間の位置関係が歯の噛み合わせの都合によって「ずれた状態」のことです。
噛み合わせの治療はその位置関係を正常に戻すための治療です。適正な関係に戻すことができれば筋肉は正常に機能できるようになり、筋肉は安静になります。

あなたに合わない「噛み合わせ」は「下あご」と頭(頭蓋)の位置関係にズレおこす

下の図は「下あご」と頭蓋との位置関係を示していますが歯の高さが左右で違っている場合、その状態で上下の歯を咬み合わせると「下あご」が矢印の方向にズレます。ズレるというより回転し、捩じられるイメージです。

このとき、頭蓋と「下あご」を結ぶ筋肉(咀嚼筋)は無理な動きをせざるを得ないので、疲労します。
片側が低い噛み合わせは「下のあご」の位置を低い方に回転させるように歪ませます。そうすると「下あご」を支えている顎関節や「下あご」を動かしている筋肉も正常に機能できなくなります。

3-2.筋肉を緊張させない「噛み合わせ」(=よい嚙み合わせ)

筋肉を緊張させない噛み合わせは、良い噛み合わせです。
筋肉を緊張させない噛み合わせは、上下の歯が噛み合うときに「あご」の位置がズレることなくいつも同じ場所にもどります。
あなたに合った噛み合わせによって、「あご」の筋肉の緊張がとれると、波及効果として頭痛や肩こりも改善します。
緊張型頭痛はや肩こりは「あご」の筋肉の緊張から始まります。つまり、肩がこるひとは「嚙み合わせ」に問題があることが多いのです。
「あご」の筋肉は非常に繊細で歯の噛み合わせからの影響を受けやすく、噛み合わせが良くなり緊張しなくなると、肩こりも緊張型の頭痛も解消します。
頭の周りの筋肉は「あご」の筋肉と密接に連携しているので、「あご」の筋肉の緊張がなくなれば肩の筋肉と頭の周りの筋肉の緊張もなくなり頭痛も改善します。
すなわち、「あご」の筋肉の緊張を和らげることで頭痛の治療ができる場合があるのです。これは頭痛で悩まれていれる方にとって、新たな選択肢になると思います。

肩こりの治療は現代医学ではどこの科でも根本的に治すことが難しいので、整体、カイロ、鍼灸などの代替医療に頼るしかありませんでした。
これに対して、歯科治療の中から生まれてきた発想で、根本的療法に近い効果が期待できる可能性が現実味を帯びています。これは、「嚙み合わせ」という領域を必要としているので歯科治療の一環と見なせます。

このような事実が広まっていくためにはまだまだ時間が必要だと思います。

4.噛み合わせ治療のながれ

噛み合わせの治療の順序

  1. カウンセリング
  2. 噛み合わせの異常と体調不良の関係を調べ、筋肉の緊張の度合いを測る(筋電計)
  3. 筋肉が緊張しない「あご」が楽な位置をさがす(TENSとK7を使用)
  4. その「あご」の位置を維持するための装置を作って使用してもらう
  5. 症状が改善されたら最終治療に移行する
1)カウンセリング
  • お悩みのあらまし、これまでの経過などを詳しくお伺いします。
  • 噛み合わせと関連した症状であり解決可能かどうかを判断します。
  • 症状を改善する治療が可能かどうかを判断します。
  • 治療方法・予後・治療期間・費用などをご説明して、受診の意思の有無を確認します。
2)噛み合わせの異常と体調不良の関係を調べる

噛み合わせの検査

  • 噛み合わせによる姿勢の変化を全状態を調べます。
  • 筋電計を装着して「あご」の筋肉の緊張の度合いを計測します。
  • TENS(低周波治療器)を約1時間使用して「あご」の筋肉の緊張を解き、安静に導きます。
  • 「あご」の筋肉の緊張が緩和されたかどうかを筋電計で確認します。
  • 「あご」の筋肉の緊張が緩和されたことを確認できたら、その時の「あご」の位置と現在の噛み合せの位置をCMS(K7)の画面上で比較して判断しその位置を記録します。
  • 噛み合わせが症状の原因になっているかどうかを最終的に判断します。

 

3)「あご」の筋肉の緊張をとって「あご」が楽になる位置をさがす

噛み合わせの治療は「あご」の筋肉が緊張しないように噛み合わせを治療することですが、そのためには「あご」の筋肉の緊張を一時的に低周波治療器で緩和して、その「あご」の状態を維持する装置をつくって装着してもらいます。
そうすることで「あご」の筋肉は悪い噛み合わせからの影響を受けなくなるために緊張がとれて安静になり楽になります。
それにつれて「あご」の筋肉と密接な関係にある肩や首筋、頭の周辺の筋肉、背中や腰の筋肉も同時に楽になります。

4)リラックスした「あご」の位置を維持するための装置をつくる

筋肉が緊張しない「あご」の位置を探すことが出来たらその位置を維持するための装置を作ります。

筋肉が緊張しないで顎が楽になる位置を維持するためのオーソシス

透明な硬い樹脂でつくったオーソティック(マウススピースの一種)下の歯にはめて使います。
オーソシスは下顎安静位で「あご」を支えて筋肉を安静にすることが目的です。「あご」の筋肉が安静になっていくにつれて肩こりが徐々に改善されていくことを実感していただけるはずです。
オーソティックは最初は食事以外にできるだけ長時間装着していただきます。症状が緩解してきたら、症状が出ないときには外していただいてかまいません。

5)結果がよければ、その「あご」の位置で歯が嚙み合うように治療する

症状が改善されたら最終的な治療に移行してやらなければならないことがあります。
オーソティックを使用していただいて肩こりや頭痛が軽くなったとしても使用を中止すると症状が戻ってくることがあります。
戻ってくるときには再びそのオーソティックを装着していただければよいのですが、オーソティックに頼らなくても肩こりが再発しないようにするためには最終的にはご自分の歯を治さなければなりません。
その治療はかなり大掛かりな治療になることがありますが、とりあえず辛い症状から逃れて健康な日常生活を取りもどした後でゆっくりと計画的に取り組まれればよいのではないかと思います。

 

まとめ

噛み合わせが悪いと肩がこり、同時に頭痛もおこるということは経験的に知られていました。
しかし噛み合わせと筋肉痛(頭痛)の関係を科学的に追及した歯科医学の研究者はいませんでした。
約50年前に米国の歯科医が低周波TENSという装置を歯科治療に導入したことから歯科における筋肉の研究が始まりました。
TENSに続き「下あご」の動きと位置を正確に計測する装置をつくり、さらに歯科用の筋電計も導入してからこの分野の研究と治療が飛躍的に発展しました。
その結果、筋肉の緊張を和らげるという医学の他の分野ではおこなわれていなかった治療が可能になりました。
首のこり、肩こり、緊張型の頭痛、背中や腰の筋肉痛で苦しんでいる人は非常に多く、国民病ともいわれていますが、これらの疾患は歯科の分野ではあまり取り上げられてこなかった分野ですが、今後はもう少し積極的に歯科からのアプローチを強めていきたいと考えています。

 



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