耳がつまった感じ、噛み合わせとの関係は? 20年来の耳閉感が噛み合わせ治療で解消した方

      2023/08/21

エレベーターで上昇するときに耳がツーンとつまった感じがすることがあります。多くの方は「耳抜き」をするとすぐに改善します。しかし、それがなかなか改善せずに20年間続いたとしたらどうでしょうか?
さぞかしつらいことだと思います。
もちろん耳鼻科には何度も相談されたのですが解決されなかったようです。
耳閉感は鼻と耳をつなぐ耳管という管がつまったり開きっぱなしになったりすることでおこる症状ですが、今も有効な治療法はないようです。
耳管を閉じたり開いたりする筋肉がうまく働かなくなることが 原因のひとつであると考えられています。
通常は唾を飲み込むとその筋肉が同時に働いて耳管を開くことによって気圧調整するのですが、機能できなくなっているのです。なぜなら、嚥下するときの「下あご」の位置と「嚙み合わせ」の安定性の問題があったからなのです。

耳管を開く筋肉は「下あご」の位置を調整することで正常に機能するようになることは50年ほど前から一部の歯科医に知られていました。
一般的に「下のあご」が後ろに下がっていると耳管が圧迫されて耳がつまった感じになると考えられています。
今回ご紹介するは、下あご(下顎)の位置を調整することによって耳づまりが解消した方の例です。

 

症例の紹介

患者さんは当時55歳の主婦の方でした。
「20年くらい前から耳が詰まったような感じがしている」ということで来院されました。
耳鼻科にかかったりしていたのですが、治っている気がしなくて自分では何となくあご(顎)からきているのではないかと思い、銀座の歯科医に相談したところ歯がきれいに噛み合っていないためではないかといわれました。
このまま放置すると将来、嚥下が正しく出来なくなるのではないかと思い来院されました。

 

「下あご」のズレの測定と診断

さっそく「下あご」の位置のずれを計測することにしました。
「下あご」の位置のずれを計測する装置は50年も前から存在していて一部に歯科医には使われてきていますが、十分に活用している歯科医はわずかです。その結果をここに示しますのでご覧になってください。

複雑なので、要点だけを説明します。
画面中央やや右の上部に赤い三角形があります。その上に赤い数字で3.7とあります。それは「下あご」が3.7mm後ろにずれていることを示しています。
さらに画面の左下に緑色の折れ線がありますが、そこに緑色の数字で1.1と出ていますがそれは現在噛んでいる「下あご」の位置が1.1mm右にずれていることを示しています。
基準となっているのは下顎安静位という「下あご」が楽な位置で、そこからの距離を表しています。
これらのずれを修正して「下あご」を下顎安静位に誘導して安定させると「下あご」周辺の筋肉が(こり・緊張のない)安静状態に落ちつきます。
そうすると耳管の開閉を行っている、口蓋汎挙筋や口蓋汎張筋などという筋肉が正常な機能を営めるようになります。

 

「下あご」の位置のずれを修正

「下あご」のズレを修正して「あご」を安静位に導く役割を果たすのは、マウスピースの一種であるオーソティックという装置です。
下の写真はその装置を装着しているところを示しています。

オーソティックは透明な樹脂で作られているので見えにくいかもしれませんが、下の歯の上に装着されています。
この装置を付けている間は「下あご」は下顎安静位に位置づけられて安定しています。
食事以外の時間は使用していただけたら短時間で効果があらわれます。
下の図はその時の「下あご」の位置を示しています。

この図はオーソティックをはめているときの顎の位置を示していますが、前の図で見られた赤い三角形は無くなりました。
また図の左下の方の緑の折れ線の折れ曲りがなくなります。これはオーソティックを入れていれば「下あご」の位置が左右にズレないことを示しています。「下あご」がいつも真っすぐに閉じるようになったので、「あご」が安定して開閉運動ができるようになったことを示しています。

 

「下あご」のズレを修正した結果

オーソティックを装着した直後の患者さんの反応

3週間後:

  • 「あご」が前に出てきた感じ
  • 最初は違和感を感じたが今は楽に感じている
  • 耳の詰まりが少し良くなった。
  • 朝起きてから10時くらいまでは耳が詰まりはのこっているが昼間はほとんどなくなり楽になってきた
  • オーソティックの効果を感じている

2ヵ月後:

  • 耳の詰まりはあまり気にならなくなった
  • 20年ほど症状が出ていたので、とてもうれしい

その時の喜びのお気持ちを手記にしたためて下さいましたので紹介させていただきます。

「20年以上の耳のつまり感が消えました!
23年くらい前からどうも耳の奥の方で詰まっているような違和感があり耳鼻科に通いました。聞こえに異常はなく吸入などしましたが、治る感じがせず耳の後ろの顎関節を強く押したりしてやると少し治るので、その頃から嚙み合わせだなあと自分なりの診断をしていました。
出っ歯と歯並びの悪さから、自然に口を閉じた位置からものを噛むときには下顎が奥に入っていたのは自覚していたからです。
でもこの嚙み合わせを診て下さる先生はいらっしゃらず、虫歯の治療でかかって(いるときに)かみあわせを尋ねても上手にごまかされたり・・・。
矯正をしている知り合いがいたらどこにかかっているのか歯医者さんを聞き、何軒か相談もしましたがどうも私の違和感を理解してくれる様子ではなく相談だけで終わりました。
50代も半ばを過ぎもう諦めていよいよ悪くなったら入れ歯にしようと思っていたある夜、おばあちゃんになって嚥下できなくなる夢をみました。そしてあきらめずに先生を捜してみようと思った時、矯正をなさっていた身近な方がどこにかかってたのかお聞きしていなかったことを思い出し、その方からやっと先生にたどりつきました。
すぐにいらっしゃいと言って診てくださり、問診と私の顔をみただけで症状をきちんと理解してくださいました。先生が仰る治療の見通しと具体的な治療の方法も、ひとつひとつが納得のいくものでした。
オーソティックを入れて1カ月経過しただけで耳のつまり感は消えて体調はすこぶる良くなり、下顎がきちんとした位置で落ち着いたので表情も変わりました。長い間劣等感を持っていた歯並びが直りはじめると友人からも「何か感じが変わったよ」などと言われるので「今、口の中の大工事中なの」といっています(笑)。
まだまだ治療は道半ばですが、先生に出会えた幸運に感謝すると同時に噛み合わせのことをきちんと診て下さる先生が増えることを切に願います。」

この患者さんは歯並びがかなり悪かったので、現在矯正治療をさせていただいております。

 

まとめ

耳鼻科でも治せなかった耳閉症が歯科で治せるということは意外に感じられたことと思います。
歯科でもすべての歯科医が治せるわけではなく、ニューロマスキュラー理論という考え方に興味をもって研鑽してきた歯科医だけが確実に治せる技術をもっています。
このブログはこのニューロマスキュラー理論をもっと多くの人に知ってもらい、その恩恵をできるだけ多くの人にもたらすことを目的としています。

 



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