矯正治療後に起こることがある不定愁訴とその対応

      2023/08/08

歯科矯正治療後にそれまでなかった不定愁訴があらわれて、悩んでいる人は少なくありません。それはなぜなのでしょうか。
見た目を重視しすぎると、それまで安定していた歯と咀嚼筋をはじめとする筋肉のバランスを崩してしまうことがあるからです。

見た目の「歯並び」と「あごの筋肉や顎関節」が密接に関係しているということを忘れてしまうと、「見えない筋肉や顎関節」にしわ寄せが及んでいることに気づかないで治療を終了してしまうことがあります。

不定愁訴の訴えがあっても、見えない筋肉や顎関節に対して考えが及ばなければ、有効な対策は講じられにくいのです。それでは、これらの不定愁訴はどのような方法で改善することができるのでしょうか。

ここでは訴えの多い不定愁訴とその原因、矯正治療との関連、解決法などを噛み合わせ治療を数多く手がけてきた歯科医として解説させていただきます。

 

矯正治療後に現れる不定愁訴とは

1-1.少なくない矯正治療後の不定愁訴

最近の傾向として、矯正治療中または終了後に、顎関節症をはじめとして頭痛、肩こり首筋の痛みなどの筋肉症状や、動悸や息切れ、めまいなどの自律神経系の不調、気分の落ち込みなどの不定愁訴に見舞われる人が少なからずいらっしゃいます。
その最大の理由は矯正治療を受けたことによって、見た目はともかく安定した噛み合わせが崩れてしまったためです。しかし、今までのところ不定愁訴と矯正治療との因果関係についての正式な見解がないために、この問題に真剣にとり組んでもらうことは難しくなっています。
結果的に不定愁訴に見舞われた方は、経過観察か対処療法しか受けられず、解決されない苦しみに耐えているばかりです。

不定愁訴自体の原因や治療法についての定説がないのが今の現状ですが、それでもこの問題を未解決のまま放置していいとはいえません。
噛み合わせ治療を通して不定愁訴に悩む多くの方を治療してきた経験から、矯正治療後に起こる不定愁訴との因果関係を疑わざるを得ません。
不定愁訴はどのようにしておこり、どうすれば改善できるかということをある程度経験しているのならば、矯正治療との関連や、それ以外の要因も考えながら症状を改善することはそれほど難しいことではありません。

1-2.矯正治療後の不定愁訴で悩む方々

それでは当院で治療した症例を含めて矯正治療中・治療後の不定愁訴で苦しんでおられる方々の様子を紹介させていただきます。
あなたにも共感することが多いのではないかと思います。

悩み相談サイトに寄せられたお悩み その1

歯列矯正と顎関節症について同じような経験をした方、回答を下さると嬉しいです。
3年前に歯列矯正を始めました。ですが、途中から顎関節症のような症状が現れてきました。
・口を大きく開けた時にガックンと音がするようになった。
・顎の関節に痛み、圧迫感がある
・頭が重く、常に疲れが取れない
・体が不安定になったような感覚がある
・噛み合わせが、症状が出る前に突然悪くなった
症状が出てからはゴムを使って顎の位置を矯正するようになりましたが、症状が出てから現在まで症状、噛み合わせは悪化するばかりに感じます。
矯正歯科の先生に何度か相談をしてみましたが、よく聞いてくれず、まだしっかりと具体的な症状についての相談をしたことがありません。
自分的に、これ以上続けても症状は悪化するばかりで、それならいっそのこと歯列矯正は中断した方が良いのでは?と考えているのですが、どうなのでしょうか?

 

悩み相談サイトに寄せられたお悩み その2.

矯正後の顎関節症について

途方に暮れています、アドバイスください。長文、駄文お許しください。
現在30歳、22歳の時に思い切って歯列矯正を始めました。
親知らずを上下全て抜き、矯正自体は1年ほどで完了しましたが、リテーナーに移行したところ右側が全く噛み合っていないことに気付いて、歯科医師に申し出たところリテーナーを少し調整して終わり。あとはよく噛めば自然と落ち着いてくるといわれその通りにしましたが噛み合わせの違和感は無くならず、噛み合っていない右側の顎の違和感、右側だけ首と肩のこりが続きました。
何度も噛み合わせのことを歯科医師に訴えましたが、医者は神様ではないのだから完璧にはできないと取り合ってもらえず、その後しばらくは不調を感じながらもそのままにしていました。
27歳の時に右半身のこりが酷くなり、首から肩のこり、頭痛、眼痛、腰痛、右手指のしびれまで出てきて、これはなんとかしないと思い噛み合わせの治療をうたっている別の歯科に相談に行きました。
そこでは再矯正をするか、歯を削って詰め物をして調整するかのどちらかだと言われ歯を削るのに抵抗がありましたか、矯正自体が信用できなかったので、結局後者の治療法を選びました。これに加えて就寝時はマウスピースで噛み締め防止をしています。
今になって健康な歯を削ったことをすごく後悔しています。でもこの時は藁をも掴む思いでした。
大金をはたいて10本以上の歯を削り、セラミックの詰め物をして噛み合わせを調整しましたが、結局効果はありませんでした。
歯科医師が怖く、成果が出ていないことをきちんと言えませんでした。それどころか、削って詰め物をしたところが治療直後から沁みはじめました。
歯科医師に相談しても、神経までは削ってないからそのうち落ち着くと言われ、1年以上が経過しても沁みるのは落ち着かず、だんだん酷くなっているし、最近では硬いものを噛んだだけで痛みます。今も定期的に噛み合わせ治療をした歯科には通っていますが、今度は初期虫歯がある、歯周病だと言われてます。定期的にかかっていたのに歯周病が進行しているとまで言われました。この歯科にかかるまで、虫歯1本ない健康な歯だったのに、今も体の不調、歯の沁み、痛みで毎日が苦痛です。ほんとうに死んだ方がましだと思うくらい悩んでいます。
まずは歯の沁み、痛み、歯周病を診てもらうためにまた別の歯科をかかる予定ですがそもそも噛み合わせの悪さからくる噛み締めが原因ではないかと思っています。もうこれ以上歯に余計な負担はかけたくありませんが体の不調も限界です。同じように矯正後に顎関節症や体調が不調になった方で治療の成果があった方、どんな治療を試しましたか?もう歯科医師が信用できないので歯周病だけは治療して、体の不調については整体や運動で多少解消できないかと色々調べています。全部で200万円程かけて体を壊しただけなんて報われません。歯科医師を訴えることは可能ですか?

回答(ベストアンサーをいただいた回答)

噛み合わせと顎関節症やその他の全身的な不快症状との関係について長年関心をもって治療をしてきた歯科医です。
矯正治療後の体調不良で苦しんでおられるようですがそのような方は多くいらっしゃいます。
そのような患者さんをこれまでにたくさん診てきました。
矯正治療は審美性の改善を主な目的としていますので、その結果全体の噛み合わせがどうなるかということにはほとんど配慮されていません。
噛み合わせについてほとんど配慮がなかったとしても治療した個々の矯正歯科医の落ち度ではなく、矯正治療学そのものの傾向であるという見方もできます。矯正治療学の傾向というよりも、その分野の研究が進んでいないといえるかもしれません。つまり顎関節やあごの筋肉を含めた「噛み合わせ」という歯科治療で最も大切な領域の研究が十分ではなくて、「何が正しいのかが分からない」ということが問題の本質です。
そのため矯正治療においては、「歯並び」とは異なる「噛み合わせ」について何に注意して治療すべきかという基本的なことの教育は不十分になりがちです。その結果、矯正治療後にあなたのように噛み合わせの不調を訴えられる方が多く見受けられるのです。なぜ体調不良や顎関節症などが発症したかということについて問われても顎関節や咀嚼筋と「嚙み合わせ」の関連性を把握していなければ答えようがありません。有効な対処法を持ち合わせていなければ、治療した方も治療された方も途方に暮れてしまいます。
矯正治療は日進月歩進歩しているのですが、噛み合わせとの関連というところの研究は殆ど進んでいないので、問題がおこると対処のしようがない場合があります。その意味ではまだ発展途上にあるということかも知れません。
これは矯正治療学の問題というよりは咬合学の問題であるということになります。咬合(噛み合わせ)と全身症状、特に筋肉との関係についての研究は非常に遅れています。中心となる理論的な原理原則でさえ確立されていません。
この咬合学が確立していれば質問者さんのような噛み合わせの問題は起きないでしょうし、万一起きたとしても何が原因でなにが起きているかということを説明することができるはずです。もちろん治療をすることができるはずです。

この咬合学については200年以上も前から世界中の様々な研究者がいろんな仮説を提唱してきましたが、それはあくまでも義歯を作るための学問でした。
その後、噛み合わせ(咬合)と全身症状との関係につての関心が高まり盛んに研究されましたが、その間の因果関係についてはまだ十分に解明されていません。
それどころか最近のアメリカの有力な学派は、質問者さんが苦しんでいるような辛い症状は噛み合わせ(咬合)とは関係が無く、社会心理学的なストレスや中枢神経系の問題なのではないかと言い出してきています。
日本でもこの考え方を支持する学者は多く、そのため矯正治療で噛み合わせのバランスが崩れて質問者さんが苦しんでおられるような症状が起こってもそれは噛みあわせのバランスが崩れたせいではないということになります。
大学の先生方の多くはこの学説を支持していますから、矯正治療のためにこうなったと訴えたところでまともに取り合ってもらえないはずです。
筆者は50年前に出会ったアメリカの臨床家が提唱した学説(仮説)に感銘をうけて噛み合わせの異常と様々な全身の不快症状(TMD)の関係に興味をもって治療をしてきました。その仮説とは噛み合わせの異常が原因で下顎の位置が狂い、それが原因で周辺の筋肉が緊張してさまざまな不快症状を引き起こすというものですが、中央の学会でこの考え方を支持する人はほとんどいません。
たとえば質問者さんの場合、矯正治療が終了した段階で右側の奥歯が全くかみ合っていなかったそうですが、そうすると右側で噛んだ時に右のあごだけがわずかに上に上がって下のあごは全体として反時計回りにわずかに回転します(歪みます)そうすると右側の顎関節に負担がかっかるようになりますし、あごの周囲の筋肉の左右のバランスも崩れて右の筋肉は緊張します。それはひどくなれば痛みに変わります。
その右側の筋肉の緊張は首や肩の筋肉にも波及して、右側の顎(関節)の違和感や右側だけの首と肩こりなどとして表れてきます。このようにそれ程医学知識が無くても理解できそうなことでも、中央の学会の先生方はあまり問題にはしてくれません。そのためこの仮説に基づいて治療をしている臨床家もほとんどいません。
その数すくない臨床家の一人として回答させていただいているわけですが、それは何故かといえば、長年このような仮説を信奉してそれに忠実に治療をしてきた結果、質問者さんが悩んでおられるような辛い症状はほぼ完全に解決することが出来るようになったからです。なおかつその結果にも確信が持てるようになりました。
その確信はどこからきているのかは実際の症例を通じて理解していただければ幸いです。

 

悩み相談サイトに寄せられたお悩み その3

歯科矯正の失敗とその後の対処について。

私は30歳男性で、3年前にすでに矯正治療を終えた者です。
症状改善の方法の有無や、それに要する費用等の質問です。
長文で心苦しいのですが、お答えいただける方がいらっしゃいましたら幸いです。
先述のとおり、すでにブラケットは取り外しており、その後は現在に至るまでリテーナーを使用しています。
非抜歯で表側からの矯正でした。
治療中より疑問に感じていた点として、左半分の噛み合わせに大きな違和感があり、しっかりと噛もうとすると上下の歯が滑るような症状があります。
そして、その症状は改善されず、むしろ日に日に悪化しているように感じています。
この症状は矯正治療を受ける以前にはなかったもので、ブラケットを使用していた時期、診察中に担当医へ伝えておりましたが、その際、「後で診てみます」とは仰るものの、何ら所見もお伝えいただけず診察を終えられていました。
こちらの症状に関しては、左側の上下が上手く噛み合わない感覚から、それに気を使って常に上下の歯を浮かせていることが癖となってしまったため、そこから顎の痛みや首のハリ、肩こりや頭痛等、体調にも影響が出ているため、大変辛いです。
そして、私は舌で前歯を押す癖があるようで、それが原因と思われるごく軽度の前突がありました。
矯正治療により、前突に関しては改善がみられていたのですが、保定期間に入り、毎日リテーナーの装着は行っていますが、また少しずつ前突がみられるようになってきた印象を持っています。
恐らく、舌癖そのものが改善されていないことが原因のように考えているのですが、そもそも、舌癖について初めて担当医よりレクチャーを受けたタイミングが、ブラケット取り外しの前回にあたる診察中でした。
担当医も、診察中に唐突に思い出したようにお話になられていましたので、素人ながら、もっと早いタイミングから舌癖改善のトレーニングを行う必要があったのでは、と推測しています。
これらの事があり、担当医や病院に不信感を抱いたため、リテーナーの引き渡しと同時に保定期間へ移行した後は、一度も診察には伺えていません。

正直、裕福ではないところから歯列矯正を行いましたので、また初めから矯正治療を受ける余裕がありません。
それでも、このような場合は再度矯正治療を受ける必要があるでしょうか?
加えて、同院において何らかのケアは行っていただけるものなのでしょうか?
病院側に直接伺うべきことであるのは重々承知なのですが、一度のレントゲン撮影で数万円を要しますので、少々気遅れしております。
私が受診したのは、都心にある大学病院の矯正歯科です。現在、当時の担当医はすでに退局しているとのことです。
一点、記入を忘れた症状がありましたので、補足させていただきます。
こちらも矯正前には全くなかったことなのですが、矯正治療を進めていく中でオープンバイトの症状が現れました。
上下の歯を噛み込めるだけ噛み込んでも、上下前歯の間に隙間があり、そこから舌が見えます。
この点に関しても、左側の噛みあわせ同様、診察中担当医にお伝えしておりましたが、上記同様、何らご対応いただけませんでした。もちろん、現在この症状にいたってもそのままの状態です。

回答投稿(ベストアンサーをいただいた筆者による回答)

あなたのような悩みを抱えて途方にくれている方はあなただけではありません。そのような方を大勢診てきました。
ちなみに半年前の7月11日にもこの欄で同じように矯正治療後の不定愁訴で悩んでおられる、30歳の方の質問にお答えさせていただきました。

その方も矯正治療後に右側の歯が全くかみ合っていないことに気づき、治療した医師に申し出たところ、リテーナーを調整しただけで解決してもらえなかったとのことです。
その後右側の「あご」の違和感、右側だけの首と肩こりに悩まされ、27歳の時には右半身の凝りが酷くなり、首から肩のこり、頭痛、眼痛、手指のしびれなどが出てきたそうです。
そこで他の歯科で相談して、10本以上の歯を削りセラミックをかぶせて調整してもらったのですが結局は解決しなかったとのことです。
それだけでなく健康な歯を削って被せたところが冷たいものに滲みはじめたとのことでした。現在は身体の不調、歯の滲み、痛みで毎日が苦痛とのことで、結局200万円以上をかけて体を壊しただけで報われなかったことを悔やんでおられます。

ところであなたの場合は矯正治療後に左半分の噛み合わせに違和感があり、噛もうとすると上下の歯が滑るようでしっかりと噛めなくなったようですが、それだけでなく「あご」の痛みや首のハリ、肩こりや頭痛などの体調の不良が出てきたために大変お辛いことと思います。
それだけでなく前歯部がしっかりと噛みあわないオープンバイトの傾向もあるということのようですね。これは大学病院の矯正科の治療としては恥ずかしい結果だと思います。

以上二つの矯正治療後の偶発事項には共通点が二つあります。
一つは治療後にかみ合わせがしっくりしなくなったという違和感があるということと、首凝り、肩こり、頭痛などの筋肉の緊張に由来する不定愁訴が表れたということです。その他にも動悸、息切れ、倦怠感、意欲や集中力の低下など自律神経系や精神的な障害にも見舞われる可能性もあります。
これらの症状の発現の状況からすれば立派な医原性疾患ですが、残念ながら現状では治療した医師の責任を追及したり保障を求めたりすることはできません。結果的には泣き寝入りということで放置されることになります。これは非常にむごいことだと思います。
その理由はこれらの偶発事項が矯正遅治療後に起こりうるということとの因果関係を歯科学的、医学的に証明することが現状では困難だからです。そこまで研究が進んでいないためです。
そのようなことがなぜ起こるかという因果関係や予防法、治療法などについての研究が進んでいないために当然そのような教育もされていません。
そのため担当した医師の責任を問うこともませんし、治療した医師自身もどのように対応したらよいのかわからずに、非常に困った立場に立たされていると思います。

矯正治療は日進月歩で進歩していますが噛み合わせとの関連というところでは研究はほとんど進んでいません。そのため一旦事故がおこると対処のしようがないという危険な分野でもあるtということです。それは歯科治療全般についていえることです。
咬合(噛み合わせ)と全身、特に筋肉との関係についての研究は非常に遅れています。頼りになる理論的な原理原則は全く確立されていません。この咬合学が確立されていれば、質問者さんのような悲劇的なことが起こるのを未然に防ぐことができたでしょうし、起こったときに適切に対処することもできるはずです。

筆者は50年前に出会ったアメリカの臨床家が提唱した学説(仮説)に感銘をうけて噛み合わせの異常と様々な全身の不快症状(筋肉症状=TMD)の関係に興味をもって治療をしてきました。
その仮説とは噛み合わせの異常が原因で下顎の位置が狂い、それが原因で周辺の筋肉が緊張してさまざまな不定愁訴を引き起こしますが、中央の学会でこの考え方を支持する人は未だにほとんどいません。
その数少ない臨床家のひとりとして回答させていただいているわけですが、それはなぜかといえば長年この仮説を信じて忠実に治療をしてきた結果、質問者さんが悩んでおられる辛い症状を完全医解決することが出来るようになったからです。
質問者さんの場合、矯正治療が終了した段階で左半分の噛み合わせに違和感があり、しっかり噛もうとすると上下の歯が滑るような症状がありうるそうですがそれは明らかに上下の歯がいわゆる咬頭嵌合をしていないことを示しています。
咬頭嵌合とはお互いの対向している歯の高いところ(咬頭といいます)と低いところ(窩といいます)が嵌合(噛み合う) することです。
高いところと高いところ、つまり咬頭と咬頭が当たっているような場合には「あご」が固定されずに滑るような感じになります。これは明らかに不正咬合(噛み合わせ)の一種で、歯が「下あご」を固定する機能を果たせないために咀嚼筋が疲労します。そうすると「あご」の周辺の筋肉が緊張してさまざまな筋肉のこりや痛みの原因になります。
質問者さんも「あご」の痛みや首のハリ、肩こりや頭痛などの体調不良を訴えておられますが、それは噛み合わせの不良からきていることは明らかです。

矯正治療でこの咬頭嵌合をしっかりと達成することは難しいことですがとても大切なことです。
矯正治療の終了はすべての歯がしっかりと咬頭嵌合したことを確認したうえで終了します。
前歯部のオープンバイトを放置した状態で治療を終了してしまったようですが、大学病院ではあってはならないことが起こってしまったようですね。

最後に質問者さんからの後半のご質問にお答えします。

①「再度矯正治療を受ける必要があるでしょうか?」ということですが、まずその前にマウスピースなどで臨時に咬頭嵌合を回復して首のハリや肩こり、頭痛などの不定愁訴を解決することをお勧めします。
そのあとでそのような噛み合わせの状態を維持するためには歯に被せ物などをして達成するのがよいか、あるいは矯正治療がよいかを判断してください。
神経が残っている健康な歯が多い場合には歯を削ったりしなくてすむ矯正治療による解決法が望ましいの ですが、それは最初から矯正治療を行うのではなく、マウスピースなどで不快症状 が消えて再発しない下顎位を探して確立してからおこなうというのが鉄則です。

②「同院において何らかのケアを行っていただけるものなのでしょうか?」
通常TMDの治療を行っている医療機関でなければ同じ結果になってしまうのではな いでしょうか?時間と費用が無駄になる可能性があります。

 

1-3.矯正治療と関連する不定愁訴の症状

矯正治療後の後遺症としては次のような種類の症状があります。

  • 噛み合わせの違和感
  • 顎関節症
  • 筋肉の緊張による痛み
  • 自律神経系の症状
  • 精神的な不調

 

1)噛み合わせの違和感

矯正治療によって噛み合わせの異常を自覚する人は、まず最初に次のようなそれまでになかった噛み合わせの違和感を感じるようになります。

  • 噛み合わせがしっくりしない
  • 噛み合わせが合わない
  • どこで噛んでよいか分からない
  • 噛んだあと「あご」が疲れる
  • 「あご」の位置が定まらない
  • 自分が噛みたいところで噛めない
  • 前歯が先に当たって奥歯で噛みにくい
  • たくさん噛んだあとで頭痛がおこりやすい
  • 身体にいつも力が入っている
  • 「あご」が曲がっていると思う
  • 口を開くときに曲がって開く

このような噛み合わせの違和感を感じるようになったら、矯正治療の影響が疑われることになります。

 

2)顎関節症 

次に矯正治療後に起こる後遺症で多いのは顎関節症です。顎関節症の主な症状には次のようなものがあります。

  • 何もしなくても「あご」が痛い
  • 「あご」が痛むので堅いものは噛めない
  • 口を大きく開けることが出来ない
  • 口を開けたり閉じたりする度に音がする
  • 口が曲がって開く

 

3)筋肉の緊張による痛み

矯正治療後に噛み合わせが狂った場合に影響を受けるのは全身とくに頭頚部の筋肉です。次のような部位に筋肉が緊張することによる疼痛を感じるようになります。

  • しつこい肩こりや首筋の痛みで悩んでいる
  • 頭の周辺が締め付けられるような緊張性の頭痛で悩んでいる
  • 背中や腰が痛む
  • 側頭部(こめかみ)のあたりが痛い
  • 目の奥が痛む
  • 顔面がこわばるように痛む
  • 手足がしびれる
  • 耳が詰まったような感じがする

4)自律神経系の症状

噛み合わせが狂った場合にみられる症状のなかには自律神経の不調によるのもがあります。次のような症状が矯正治療後に現れる可能性があります。

  • 不眠症ぎみでよく眠れない
  • 日中眠くてだるい
  • 常に倦怠感があり疲れやすくなった
  • 疲れやすくなった
  • 動悸がある
  • 息切れがする
  • めまいがするようになった
  • 便秘がちである
  • 生理が不順になった
  • 生理痛がひどくなった

5)精神的な不調

噛み合わせが狂うと精神的な影響が出ることが知られています。矯正治療によって噛み合わせがく変わると次のように精神的な影響が出る場合が考えられます。

  • いつもイライラしている     
  • 急に怒りっぽくなった
  • 物事に集中できなくなった
  • 意欲がわかない
  • 気分が落ち込む
  • うつ状態で人と会いたくない           
  • 不安感

なぜ矯正治療後に不定愁訴が起るのか

2-1.矯正治療は見た目の改善が目的

矯正治療はもともと歯並びを整えることを目的として発展してきた治療法です。
歯並びを改善して見た目が美しくなるように顔の審美性を重視して発展してきました。
そのため歯並びが形態的に審美的に整えば任務が達成されたと考えます。
その結果として噛み合わせがどうなるかということはほとんど考えが及びません。
その理由は噛み合わせが悪くなるとさまざまな不定愁訴がおこるということ自体が歯科界全体では共通認識になっていないからです。
その結果矯正治療後にさまざまな不定愁訴が表れたとしても、それはたまたまおきた偶発事故にすぎにないとされてしまいます。
矯正治療の結果、安定した噛み合わせがくずれてそれが原因で不定愁訴が起きるという認識は矯正歯科医にはほとんど無く、おそらく矯正歯科学界にもないのではないかと思われます。
このような状態が続く限り矯正治療後に起こる不定愁訴は無くなることはなく増え続けるであろうと考えられます。

 

2-2.矯正治療のために狂う可能性のある噛み合わせの異常

矯正治療によってもたらされる噛み合わせの異常には次のようなものがあります。

  1. 奥歯(臼歯部)が低くなる
    その結果前歯が先に当たり奥歯でよく噛めなくなる
    「下のあご」が後ろに後退する
  2. 噛み合わせが不安定になる
    どこで咬んでよいか分からなくなる
    噛み合わせが滑るようになる
    「あご」の位置が定まらなくなる
  3. 「あご」の位置が左右どちらかに変位する
    曲がって口が開く
    顔の形が曲がる

 

矯正治療後の不定愁訴の治療法

矯正治療後に起こる不定愁訴は、噛み合わせのバランスが狂うために「下あご」の筋肉が緊張するためにおこるので、治療の主体は噛み合わせのバランスを元のように整えて筋肉の緊張を緩和することになります。
噛み合わせ治療は以下のような流れで行います。

  • カウンセリング
  • 噛み合わせの異常と体調不良の関係を調べる
  • 筋肉の緊張の度合いを測る(筋電計)
  • 筋肉が緊張しない「あご」が楽な位置を探す(TENSとK7を使用)
  • その「あご」の位置を維持するための装置を作って使用してもらう
  • 症状が改善されたら最終治療に移行する

治療の詳しい流れはこちらをご覧ください。

歯科医が教える!悪い噛み合わせの具体的な治療法 

 

まとめ

矯正治療後にさまざまな不定愁訴に襲われる人が増えています。
しかし現時点では不定愁訴がおこる原因については歯科界で統一見解がないために矯正治療と不定愁訴の因果関係についての証明はされていません。
そのために矯正治療後に不定愁訴に襲われる患者さんは救済されずに放置されています。
われわれ不定愁訴の治療を専門におこなっている噛み合わせ治療の専門医からすると矯正治療と不定愁訴の因果関係は明らかに理解することができますので効果的な対策も可能です。
そのため矯正治療後に起きた不定愁訴で苦しんで途方に暮れている患者さんのためにお力になることができます。

 



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