歯科医が教える!悪い噛み合わせの具体的な治療法

      2023/08/01

からだの異常の原因となる悪い噛み合わせとはなにか?どのように治せばよいかを専門医が具体的に解説します。

 

 

悪い噛み合わせの特徴とは?

1-1.噛み合わせが悪い人が感じている噛み合わせの違和感

噛み合わせの悪い人は次のような違和感を感じています。

  • 噛み合わせがしっくりしない
  • 噛み合わせが合わない
  • どこで噛んでよいか分からない
  • 噛んだあと「あご」が疲れる
  • 「あご」の位置が定まらない
  • 自分が噛みたいところで噛めない
  • 前歯が先に当たって奥歯で噛みにくい
  • たくさん噛んだあとで体調が悪くなる
  • 身体にいつも力が入っている
  • 「あご」が曲がっていると思う
  • 口を開くときに曲がって開く
  • 歯列矯正後の違和感

噛み合わせが正常な人はこのような違和感を感じていません。
これらの兆候と違和感は、歯の噛み合わせと筋肉が決める「あご」の位置が微妙にずれていることを表しています。

 

1-2.歯を嚙み合わせる度に症状が悪くなる

噛み合わせが悪い人は歯を嚙み合わせる度に症状が悪化します。
歯を噛み合わせないかぎり、顎関節の痛みや体調不良などの症状にはあまり影響しません。
つまり歯を噛み合わせないで「あご」の力を抜いて口を軽く開いている限り、悪い噛み合わせの影響を受けないで済むのが普通です。(それは可能ではありませんが)
そのため噛み合わせが悪い人はできるだけ歯を強く噛み合わせないようにするのが賢明です。

 

噛み合わせが悪い人に起こる症状とは?

2-1.原因がよくわからない体調不良と身体の異常

  • 最近何となく体調がよくない。
  • いろいろな科で診てもらったが、異常は見当たらないといわれた。
  • 疲れやすくて、常に肩も首もこっている。頭痛もよくある。
  • 低気圧の接近で頭痛やめまい、吐き気などの症状が出る。
  • 体調がすごく悪い時には、頭痛、吐き気、胸やけ、めまい、ほてり、貧血のような症状がありとても辛い。
  • ストレスを感じやすく神経質でいろいろ気にしてしまうことがある。そんなときには歯を食いしばっている。
  • 以前、顎関節症といわれたことがあり、今でも口を大きく開けたり閉めたりするたびに顎関節で音がする。
  • 歯列矯正治療をしてから違和感や体調不良が生じている。
  • 最近とくに不眠症ぎみで熟睡した感じがない。そのため朝、寝起きががよくない。
  • 体調が本当に悪いときは、夕方には横にならないと次の家事を続けられない。
  • 肩こりがひどいときは手足がしびれることがある。
  • 身体に常に力が入って辛い。
  • 精神的にも追い詰められている。
  • 呼吸や「あご」をダラリとしたり、「あご」を前に突き出すと筋肉がゆるんで楽になる。
  • 以前より集中力がなくなった。
  • イライラして怒りっぽくなった。
  • 便秘がちである
  • 生理不順や生理痛がひどい。

 

2-2.症状の特徴

  • 肩の奥の痛み
  • 胸の奥の痛み
  • 肩甲骨の痛み
  • 鎖骨周りの痛み
  • 目の奥の痛み
  • 息を吸ってもたくさん吸えない
  • 喉に締め付け感がある
  • 首が詰まった感じがして気分が悪い
  • 首凝り、肩こり、腰痛、頭痛
  • 猫背
  • 腕が上がらず痛みもある

 

2-3.噛み合わせが悪いと身体の筋肉が緊張する

噛み合わせに問題があると、「あご」を支えている咀嚼筋が緊張します。それが首や肩の筋肉の緊張を誘発して首や肩のこりとなってあらわれます。「あご」の筋肉の緊張をゆるめることができれば、首や肩の筋肉の緊張もなくなり、慢性のこりなどの症状を改善することができます。そのためには問題のある噛み合わせを治療して「あご」の筋肉の緊張をとるための治療が必要です。筋肉の緊張を緩めることが、身体の不調からの解放につながります。首や肩のこりは「噛み合わせ」という入り口から入ることで、最短コースで大きな効果を生むことができます。慢性の首や肩のこりで悩んでいる方にとっては新たな治療法といえるものです。

 

噛み合わせが悪くなったらどこで治療を受けられるか?

当院で治療可能です。
地方在住のかたで同じ考え方で診療している医療機関を探される場合には下記の学会所属の会員に相談されることをお勧めします。
下記の学会のホームページにアクセスして会員名簿からお近くの会員に連絡をしてみてください。
国際顎頭蓋機能学会の本部会 http://www.iccmo-jp/

 

3.医療機関を選ぶ際に注意していただきたいこと

治療を受けられる前に知っておいていただきたいことをまとめました。

  • インターネットの情報だけで判断しない
  • どのような考え方で治療をしているかを確認する
  • 自分の症状に近い方の治療実績があるかを確認する
  • 何らかの客観的なデータに基づいて治療をしているか
  • 患者の訴えに真剣に耳を傾けて親身に話を聞いてくれるか
  • 審美的な治療に重点を置きすぎる傾向がないか
  • 歯を削るような元に戻せない治療から始めないことが大切
  • 症状に対する効果を確認しながら進めることが大切
  • 矯正治療で歯並びを治せば噛み合わせも良くなるという説明には注意が必要(歯並びと噛み合わせは別物と考えましょう)

 

噛み合わせの具体的な治療法とは?

4-1.噛み合わせの治療は二段階でおこなわれる

一次治療と二次治療
  • 噛み合わせの治療は安全性と確実性を考慮して二段階に分けています。
  • 初めの治療を一次治療とよびます。マウスピース型のオーソティックを使います。つらい症状が改善するか確かめるための治療のことです。
  • 一次治療は噛み合わせ治療の予行演習のような意味合いがあり、「あご」の位置を一時的に変えて治療効果を確かめます。
  • 二次治療は一次治療で効果が確認された「あご」の位置を今ある歯で維持できるように、今の歯で嚙んでいる位置を変更する治療です。
  • 噛み合わせの治療は最終的には噛み合わせを変更するために多数の歯に被せ物をしたり、矯正治療で歯の位置を移動したりします。この治療はいったん始めたら後戻りすることのできない治療だといえます。
  • そのためには、取り外し式の装置によって治療効果を確かめる必要があります。この一次治療では歯を削ったりすることはありません。
  • 一次治療はオーソティックを使って症状が緩解する「あご」の位置を測定器による計測とオーソティックの調整によって見つけるための治療です。
  • そして症状が完全に緩解してからおこなうのが二次治療です。一次治療で見つけた「あご」の位置を見失わないように、二次治療ではその位置で歯が噛み合うように被せ物をしたり、歯の位置を移動したりします。

 

4-2.第一段階の治療(一次治療)

第一段階の噛み合わせの治療は以下のような手順で行います。

  1. カウンセリング(嚙み合わせを熟知した歯科医かどうかを判断してください)
  2. 噛み合わせの異常と体調不良の関係を調べる(嚙み合わせを熟知した歯科医ならば、簡単なテストである程度のことがわかります)
  3. 筋肉の緊張の程度を測る(筋電計)
  4. 筋肉が緊張しない「あご」が楽な位置を見つけだす(TENSとK7を使用)
  5. その「あご」の位置を維持するための装置をつくって使用してもらう(オーソティックによる一次治療)
  6. 症状の改善を待って二次治療に移行する
  7. 二次治療では歯の噛み合わせを再構成する(被せ物や歯の移動をおこなう)

 

1)カウンセリング
  • お悩みのあらまし、これまでの経過などを詳しくお伺いします。
  • 噛み合わせと関連した症状であり解決可能かどうかを判断します。
  • 症状を改善する治療が可能かどうかを判断します。
  • 治療方法・予後・治療期間・費用などをご説明します。

2)噛み合わせの異常と体調不良の関係を調べる

噛み合わせの検査

  • 噛み合わせによる姿勢の変化の状態を調べます。
  • 筋電計を装着して「あご」の筋肉の緊張の度合いを計測します。
  • TENS(低周波治療器)を45分ほど使用して「あご」の筋肉の緊張を解きます。
  • 「あご」の筋肉の緊張が緩和されたかどうかを筋電計で確認します。
  • 「あご」の筋肉の緊張が緩和されたら、そのときの「あご」の位置と現在の噛み合せの位置をCMS(K7)の画面上で比較して記録します。
  • 噛み合わせが症状の原因になっているかどうかを最終的に判断します。

筋電計での検査

表面電極筋電計を用いて「あご」の筋肉の緊張度合いを計測する

 

3)筋肉が緊張しない楽な「あご」の位置をさがす

下顎を安静に導く

  • TENS(低周波治療器)を 45分使用して「下あご」の筋肉の緊張をとり除きます。
  • 緊張がとれて「下あご」の筋肉が安静になっているかどうかを筋電計で確認します。
  • CMS(K7)を装着してその画面上で「下あご」が安静である位置を確認・記録します。

TENS(低周波の神経刺激装置)で筋肉の緊張を緩和する

「下あご」の筋肉の緊張をとって安静な「下あご」の位置(安静位)をさがすためにTENS(低周波の神経刺激装置マイオモニター)を使用する
TENSが一連の治療の成否を決める大切な治療器です。以後、ことあるごとに登場します。

(TENS;Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation)

 

顎運動解析記録装置(K7)で「あご」の動きや位置を記録する

二番目に大切な装置が下顎運動追跡記録装置(CMS・K7)です。 「下あご」の動きの位置を計測して「下あご」のリラックスした位置を記録する。
(CMS;Computerized Mandibular Scan)

 

4)筋肉が緊張しないで「あご」が楽になる位置で装置つくって使用してもらう

「下あご」の筋肉が緊張しないでリラックスした位置で嚙み合わせることを目的としたオーソティックによって不定愁訴のない嚙み合わせに出会う。

透明な硬い樹脂でつくったオーソティック(マウススピースの一種)を下の歯にはめて使います。
オーソティックは下顎安静位で「あご」を支えて筋肉を安静にすることが目的です。
噛むための装置ではなく「あご」の位置を変える装置です。いろいろな不定愁訴に苦しむ方にはその効果が実感できます。
さらにスムーズな嚥下(飲み込み)ができることに驚かれることでしょう。
下顎安静位とはスムーズな嚥下ができる位置でもあります。嚙み合わせとは単に噛むことだけではなく嚥下などの動作とも関係した
複雑なしくみのことなのです。すべての動作は筋肉と神経によってなされています。噛み合わせを熟知した歯科医は「下あご」の
位置を通じて直接見ることのできない筋肉と神経の健康状態を診断しているのです。
嚙み合わせによっていろいろな不定愁訴が生じていると考えられる方は、「歯並び」と「筋肉・神経」の間のキャッチボールが
うまくできなくなった状態とでもいえるでしょうか。

5)症状が改善されたら二次治療に移行する

二次治療とは後戻りできない治療なので一次治療の効果の確認がとても大切です。

 

4-3. 二次治療(最終治療)への移行

咬合再構成の二つの方法

咬合再構成の方法には、歯の上に人工の材料で被せ物をして下顎安静位を維持する方法と、歯を移動させて下顎安静位で噛むようにする矯正治療をおこなう方法があります。

補綴的咬合再構成治療

  • 歯の上に人工の材料で被せ物をして下顎安静位を維持する方法を補綴的咬合再構成といいます。
  • この方法の利点は比較的短時間で治療を終わらせることができることですが、欠点は人工の被せ物(補綴物)を固定するためにご自分の歯を削らなければならないことです。
  • 補綴的再構成治療ではいきなり歯を削って最終的な補綴物を装着する前に、樹脂の薄い歯を貼りつけて再度テストします。このように何重もの確認をするというのが嚙み合わせ治療のルールなのです。

矯正的な咬合再構成治療

  • 矯正的な咬合再構成は歯を傷つけずに歯を移動して上下の歯が噛み合うようにする治療法ですが、技術的には難しく、治療期間も長くなる傾向があります。なぜなら一般におこなわれている歯の並びを整える矯正治療とは全くことなる考え方で歯を移動する必要があるからです。つまり下顎安静位というゴールに向かって歯を正確に移動させなければならず、かなりの熟練が必要なうえ嚙み合わせ治療と矯正治療の両方の技術が必要とされるのです。

 

費用は?

5-1.費用の目安

  1. 当院では、一回の治療に費やす時間、治療の難易度、医師の知識と経験、技術力にもとづいて費用を設定しています。
  2. 噛み合わせ治療はかなり高度な治療なので残念ながら保険治療には対応していません。
  3. 治療費については、治療を開始する前に概算をかならずお知らせします。十分に理解し納得されたうえで治療を受けてください。

5-2.治療費の区分と金額

項目 内容 価格(税込)

第1段階の治療

あなたの筋電計の数値が低くなるような顎の位置を調べて「着脱式の装置」(治療用マウスガード)をつくります。
ここでの目標は、治療用マウスガードを用いて頭・あご・首・肩の筋肉および「あご」関節のネットワークにアクセスし、つらい症状を改善することです。
治療期間は3~6ヶ月程度、治療回数は3~6回程度です。

38万5千円
(3回分の精密な調整料を含みます) 
4回目以降の調整が必要な場合は別途2万2千円が毎回生じます。

第2段階の治療

歯列矯正
歯に器具を装着して、咀嚼筋や顎関節に負担のない並びに変えます。
治療期間は6ヶ月~2年程度、治療回数は月に1~2回です。

38.5万円~220万円

被せ物治療
歯を削りセラミックなどで被せ物をします。
治療期間は6ヶ月程度、1歯につき3回程度。

1本あたり15.4万円
(本数によります)

 

まとめ

  • 原因が分からない体調不良や身体の異常で悩んでいる人は多い。嚙み合わせ治療とは不定愁訴にアプローチする有効な入り口である。
  • 体調不良とからだの異常の原因は直接見ることができない筋肉の緊張である。
  • 筋肉の緊張をとれば筋肉痛や体調不良は解消される
  • 筋肉を緊張させているのは噛み合わせの不具合である
  • 不定愁訴をおこしている噛み合わせの治療は、「あご」が安静を保つことができる「あご」の位置を探すことから始まる。
  • その位置(下顎安静位)で「あご」を支えるオーソティックを使うと「あご」の筋肉の緊張が緩和する。
  • 「あご」の筋肉の緊張が緩和されたら全身の筋肉の緊張も緩和されて不定愁訴はじめとする体調不良は改善する。
  • 取り外し式のオーソティックをいわば固定式に変更することを咬合再構成といいます。二次治療とよばれ被せ物をするか矯正治療が必要です。
  • 噛み合わせの治療には近道はないことを理解して、安易な妥協をしないことが大切である。


K.i 歯科(ケーアイ歯科):https://www.kishikakamiawase.com/

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