悪い噛み合わせを治す方法。あなたの症状は矯正治療で治せる?

      2023/07/29

「噛み合わせが悪いために起こった不定愁訴の症状を矯正治療で治せますか?」というご質問にお答えします。
結論としては、噛み合わせと不定愁訴の関連を熟知している歯科医ならば矯正治療で不定愁訴の症状をほぼ解消することができると思います。その理由は、不定愁訴は「下あご」の位置があるべき範囲からはずれたことでおこっていると考えられるからです。その「下あご」の位置を修正する手段として矯正治療を用いる場合は、一般的な矯正治療とは全く異なる考え方とテクニックが必要です。なぜなら歯並びだけを整えても「下あご」の位置は変えられず、見栄えだけの治療になってしまうからです。噛み合わせを治すための矯正治療とは、見栄えのために歯並びを治すことではなく、不定愁訴をなくすためにおこなわれます。すなわち、不定愁訴と嚙み合わせ結び付けることができる歯科医にとって、矯正治療は有効な治療法のひとつなのです。
矯正治療に先立って不定愁訴を改善できるか否か、確認することから始めます。「下あご」の位置のズレをマウスピース(オーソティック)を使用して修正してみることで効率的に確認ができます。通常であれば、不定愁訴は2~3カ月で改善することができます。
ご質問の矯正治療は不定愁訴がなくなったあとに「嚙み合わせ治療」の手法として実施されるようにお勧めします。修正後の「下あご」の位置で上下の歯がしっかりと噛みあうようにする手段として用いると効果を発揮します。このように不定愁訴に対応すた矯正治療は、一般的な矯正治療とは異なるアプローチが必要なので、噛み合わせと不定愁訴の関連を熟知している歯科医を見つけることがポイントだと思います。ヒントとして、「あご」の周りの筋肉の状態を機械で計測してるならば、一定のレベルの歯科医だと考えられます。

 

矯正治療を応用して噛み合わせが原因でおきた不定愁訴を効果的に治療する方法とは?

矯正治療は歯を削ったりしない治療法なので歯を痛めにくい治療法です。
矯正治療は個々の歯の位置や角度を変えて歯並びを整えることに効果的ですが、「下あご」全体の位置を変える治療に応用するためにはさまざまな工夫やテクニックが求められます。
矯正治療は見た目が悪い歯並びをきれいに整えるための治療法として発展してきました。つまり、見た目を重視した歯並びのための治療法といえます。しかし乱れた歯並びをきれいに整えても不定愁訴が改善されるわけではありません。
不定愁訴とは乱れた歯並びのせいではなく、「下あご」が筋肉や顎関節に不適切な位置にあるためにおこる不快症状だからです。
そのためいくら歯並びが悪くても不定愁訴のない人はいくらでもいるのです。
不定愁訴をおこす「噛み合わせ」とは歯が噛み合う度に「下あご」の位置をずらしてしまう「噛み合わせ」のことです。
「噛み合わせ」によって「下あご」がずらされると、「下あご」を動かしている筋肉や顎関節が安静を保てなくなり緊張がつづくことによってさまざまな不快症状がもたらされます。
不快な症状(不定愁訴)を治療するためには、ずれて不適切な位置にある「下あご」の筋肉や顎関節を緊張させない安静な位置に戻すことが必要で、それができれば不定愁訴を取り除くことができます。
ですから、不定愁訴の矯正治療は歯並びの治療ではなく「下あご」の位置を修正するための治療が主体となります。

 

1-1.矯正治療はオーソティックを用いた初期治療によって不定愁訴が改善した後で噛み合わせを治すための手段のひとつです

治療の目的は不定愁訴を解消することですが、はじめから矯正治療で不定愁訴を解消しようとすることはあまりおこなわれません。
不定愁訴は「下あご」の位置がずれることで起こりますので不定愁訴を解消するためには「下あご」の位置のズレを修正しなければなりません。
しかし矯正治療は「下あご」の位置のずれを修正するための治療手段としては効率がわるく、そのため治療期間が長くかかる傾向があります。そのうえ効果が不確かになりがちです。
その理由は矯正治療は個々の歯を動かす手段としては優れていますが「下あご」全体の位置を正確にコントロールするという手段としては技術的に難しいからです。
そのため「下あご」の位置を正して不定愁訴を解消する手段としては矯正治療ではなく別の方法を選択する場合があります。
それはマウスピース(オーソティック)を使うという方法です。
マウスピース(オーソティック)を使用すると、「下あご」の位置を正確に管理して修正することができます。
「下あご」の位置を正確に把握して不定愁訴が消える「あご」の位置(下顎安静位)を正確に把握してオーソティックで誘導することができれば不定愁訴を改善することができます。効果は短期間で現れて不定愁訴の症状を解消することができます。
不定愁訴の症状が緩解したあとは「下あご」がズレる原因となった噛み合わせを治す治療を行うことになります。
オーソティックをはずしても不定愁訴が戻ってこないようにするためには、原因となった悪い噛み合わせを治すことが必要です。経済的な理由があればオーソティックをずっと使い続けることで対処してもかまいません。
オーソティックを使わなくても不定愁訴が戻ってこないようにするためには、不定愁訴が起こらない「下あご」の位置(下顎安静位)で歯が噛み合うように噛み合わせを並べかえて咬合を再構成する治療が必要になります。
この段階の治療をそれまでの症状を解消するための治療(一次治療)と区別して、二次治療(セカンドフェーズ)と呼んでいます。
噛み合わせの治療は不定愁訴を改善する段階(一次治療)と不定愁訴をおこさない噛み合わせにつくり変える段階(二次治療)の二段階に分けて考える方が安全で確実な結果につながります。
「嚙み合わせ矯正治療」は二次治療でおこなうと効果的です。
噛み合わせの治療がうまく進まない(不定愁訴が消えない)ときは一次治療の効果の再検討が必要になります。
悪い噛み合わせを治せば不定愁訴が無くなるはずだと考えて矯正治療などを始めてしまうことが多いのですが、そうすると歯並びだけが改善して不定愁訴は解消しなかったなどという結果になりかねません。
または漠然と歯を削る咬合調整を続けて、かえって症状が悪化する場合もあるので注意が必要です。
そのようなことを避けるためには治療の初期に比較的に短期間でおわる不定愁訴をなくす治療を先におこなう方が安全です。噛み合わせの治療はその後でおこなう方がよいと思います。いずれにおいても筋電計などの計測機器のデータを参考にすることが必要です。

一次治療で不定愁訴を改善したら二次治療として原因となった噛み合わせの治療をするというステップは、噛み合わせ治療の原則ですが、それには重要な理由があります。
一次治療で不定愁訴を確実に消すためには不定愁訴が起こらない「下あご」の位置である下顎安静位を探すことが不可欠です。それができなければ不定愁訴を消すことは出来ません。
不定愁訴を起こさない「あご」の位置である下顎安静位を見つけるためにはそれなりの蓄積されたノウハウがあります。
残念ながら現状ではどこの医療機関でも出来るわけではありませんが、それが可能なために自信をもって治療を進めることができています。
不定愁訴を起こさない「下あご」の位置は下顎安静位と呼ばれている「下あご」の位置のことですが、この下顎安静位がすべての噛み合わせ治療の鍵をにぎっています。
オーソティックを使ってその下顎安静位に「下あご」を誘導することができれば不定愁訴を解消することができますが、それは正しい下顎安静位が見つからなければ達成できません。
治療効果が達成できたということは有効な下顎安静位が見つかったということを裏付けることになり、効果が実証された下顎位として有効性が認められたことになります。
二次治療以降では有効性が確認された下顎位を使って噛み合わせの治療をすることができますので、不定愁訴を再発させない噛み合わせ治療を安心して行うことができます。
それ以降の治療は実証された下顎安静位が保たれるように注意して行えば不定愁訴の再発のことは心配しないで自信をもって治療を終わらせることができます。

一次治療は下顎安静位を探して患者さんの「あご」を下顎安静位に導き不定愁訴をなくすための治療ですが、下顎安静位を探してその位置の有効性を確かめる治療でもあります。
一次治療で有効な下顎位を見つけて不定愁訴を消すことが出来ないかぎり、二次治療に移ることは許されません。
二次治療は歯を削ったり動かしたりする治療が多いので、歯に対する侵襲度が強く、後に戻すことが出来ない不可逆的な治療を多く行うことになります。
そのように犠牲の多い治療を行うに際してその結果、不定愁訴を解決することが出来なかったということになればその責任は償いようのない重いものになります。
そのようなことを避ける意味でも噛み合わせの治療は二段階に分けて行うことが不可欠です。

 

1-2.不定愁訴の治療でオーソティックを使って「あご」の位置を修正するとほぼ確実に治すことが出来るのはなぜか?

しつこい肩こりや首筋の痛み、締め付けられるような頭痛や目の奥の痛みなどの筋肉症状、治りにくい顎関節症、不眠や疲れやすさ、便秘や激しい生理痛などの不定愁訴はどこの医療機関に相談しても根本的な解決は得られません。
しかしこれらの症状を「下あご」の位置の異常からくる筋肉の緊張が原因であると考えて治療をすると、ほぼ完全に解決することができます。
これはまだ一部の臨床家の間でしか実行されていませんが、50年前からある考え方と治療法です。
これはまだ一般的に支持されているとはいえませんが、われわれが所属している学会では既定の事実として共有されています。
(国際顎頭蓋機能学会日本部会ICCMO)
この学会で提唱している次のような概念を理解して治療法のステップを忠実に実行することで夢のような結果が得られます。

  1. さまざまな不定愁訴の本質は筋肉の過度な緊張である
  2. 肩こりや首のこり、緊張型の頭痛などは「下あご」の周囲の筋肉の緊張から派生しておこる
  3. 「下あご」の筋肉が緊張する原因は「下あご」と頭蓋の相互的な位置関係が異常になるためである
  4. 「下あご」の筋肉を緊張させる原因は歯の噛み合わせが「下あご」の位置を狂わせるからである
  5. 「下あご」の周辺の筋肉が安静を保つことができる下顎安静位では不定愁訴はおこらない
  6. 不定愁訴を治療するためには「下あご」の位置を下顎安静位に保つことが必要である
  7. 「下あご」を下顎安静位に置くことが出来れば不定愁訴は解消する
  8. そのためには下顎安静位を探さなければならない
  9. 下顎安静位は「下あご」をの筋肉を一時的に安静に導いて採特する
  10. 下顎安静位を採特することができたらその「下あご」の位置でオーソティックをつくる
  11. そのオーソティックを使ってもらい不定愁訴が無くなったらその下顎位は正しいことがわかる
  12. 「下あご」をずらす噛み合わせは下顎安静位で噛み合うように治療する
  13. 下顎安静位をみつけて不定愁訴をなくす治療とその位置で歯が噛み合うようにする治療は二つの段階の治療であると考えて治療することが大切である
  14. 第一段階に治療で下顎安静位をさがしてその位置で不定愁訴が消えないようであれば第二段階の治療は行わないようにすることが重要である
  15. 下顎安静位を探す時もその位置でかみあわせを治療する時にも下顎位をK7(顎運動追跡記録装置)で観察しながら行うことで正確で確実な治療をすることが出来る

以上のような考え方と治療の手順を守れば不可能と思われていた困難な不定愁訴の治療を誰でも確実に行うことが出来ます。
残念ながらこのような方法で不定愁訴を治療している医療機関は限られています。
このような治療を希望される場合には下記の学会のホームぺージにアクセスして会員のページからお近くの医療機関を探されることをお勧めします。

国際顎頭蓋機能学会日本部会(ICCMO-J)
www.iccmo.jp/

 

1-3.不定愁訴が解消した後でおこなう悪い噛み合わせを治すための二次治療には二つの選択肢がある 

 

初期治療または一次治療で不定愁訴が解消されたら治療の目的は達成されたようですが、治療はこれで終わりではありません。
「下あご」の位置をずらして不定愁訴の原因となった悪い噛み合わせはそのままですから、オーソティックは手放せない状態です。
オーソティックの着用を中止すれば悪い噛み合わせの影響で不定愁訴が再発するおそれがあるのでやめるわけにはいきません。
かといってオーソティックを着用したままでは食事もできませんし、会話も不自由です。
一刻でも早く噛み合わせを治してご自分の歯で不定愁訴の再発を心配しなくてもよい生活に戻りたいと思われるのは当然です。
そこで噛み合わせを治してご自分の歯で生活できるようにするための二次治療を始めることになるのですが、この治療はある意味で一次治療よりははるかに大変な治療です。 
その理由は治療に要する治療期間と費用がはるかに長く高額になるからです。さらに技術的な難易度も高く熟練の技術が要求されます。

噛み合わせを治す二次治療の方法には技術的に二つの方法があります。

そのひとつは噛み合わせを治すためにご自分の歯の上にセラミックスを被せて上下の歯が下顎安静位で咬合するようにする治療で補綴的咬合再構成治療とよんでいる治療法です。
もう一つの方法はご自分の歯を移動させて下顎安静位で咬合させる方法で、矯正的咬合再構成治療とよんでいる治療法です。
二次治療でそのどちらを選択するかはそのときの「下あご」の位置関係や上下の歯の相互的な位置関係、歯並びの状態を考慮して決めますが、患者さんのご自分の歯に対する思いなどを考慮して選択します。

補綴的咬合再構成治療
歯の形態を人工物を被せて変更する治療法なのでご自分の歯を大分削ることになります。
まだ何も治療していない手付かずの天然歯の場合にはあまりお勧めしたくないような治療です。
歯そのものにとってかなり侵襲の多い治療法です。

矯正的咬合再構成治療
上下の歯を下顎安静位で噛み合わせるためにご自分の歯を移動して噛み合わせる治療法ですが、技術的難度は非常に高くこの方法に熟達している矯正歯科医はほとんどいません。
そのため治療期間が酷く長くかかるのが難点です。

 

矯正治療をつかって噛み合わせ治療するための具体的な治療法

2-1.一次治療

噛み合わせの治療は次のような流れでおこないます。

  • カウンセリング
  • 噛み合わせの異常と体調不良の関係を調べる
  • 筋肉の緊張の度合いを測る(筋電計)
  • 筋肉が緊張しない「あご」が楽な位置をさがす(TENSとK7を使用)
  • その「あご」の位置を維持するための装置を作って使用してもらう
  • 症状が改善されたら最終治療に移行する

 

2-2.二次治療

矯正治療をつかった最終治療(二次治療)
二次治療は一次治療で見つけて不定愁訴が消えることが実証された下顎安静位を維持しながら上下の歯をしっかりと噛みあわさせることが目的です。
一番のリスクは上下の歯が噛み合った段階で「あご」の位置がズレてしまうことです。
矯正治療は補綴的な治療にくらべて下顎安静位を維持することが各段に難しい治療法です。

 

実際に治療した症例の紹介(矯正的咬合再構成治療)

一次治療で不定愁訴を解消したあとで実際に二次治療で矯正的な手段により咬合を再構成した症例を紹介します。

 

3-1.症例の紹介

患者さんは当時45歳の女性で数件の噛み合わせ専門医でスプリント治療をうけていたのですが、きちんと噛めないことと月に8回薬を飲むほどの頭痛、肩こり、首、背中の痛みを訴えて来院されました。

健康調査表を記入していただいたところ、上記の症状のほかに、目の疲れ、不眠、寝起きの悪さ、動悸、疲れやすさなどの症状を訴えておられました。
噛み合わせに関する病歴としては20年ほど前から顎関節症の治療を受けておられたとのことです。
噛み合わせ専門医のところで受けているスプリント治療自体にあまり納得がいかず、調整中に痛みが出たこともあったので転院されました。

 

3-2.一次治療(初期治療)

治療は姿勢と口腔内の写真、歯の石膏模型の製作、筋電図検査、などを経てTENSで筋肉の安静化をしたあとで安静位での顎位の記録を採りました。
このようにTENSを使うということは噛み合わせの治療では非常に重要でこれなしに噛み合わせの治療をおこなうことはできません。

まずTENS(経皮的電気刺激装置)で顎の筋肉の安静化をはかる
K7(顎運動記録装置)上で下顎安静位と咬合位との比較をしたところかなりの乖離がみられましたので、顎位のずれがかなり大きいことが分かりました。

上の図はK7(顎運動記録装置)で下顎安静位と習慣性咬合位を比較する画面を示しています。
画面中央の赤い三角形が大きいほど両者の乖離が大きいことを示いています。顎位のずれが大きいこと分かり、症状の重篤さを知ることができる。

下顎安静位で石膏模型を咬合器にマウントすると顎位のずれ(乖離)の大きさ具体的に知ることが出来ます。

上の写真は下顎安静位でマウントされた石膏模型をしめす。

「下あご」の力が抜けたこの状態が「下あご」の筋肉が安静で楽な状態を示しています。筋肉が緊張していない楽な状態が保たれているこの「あご」の位置で上下の歯が噛み合っていれば不定愁訴は起こらないはずです。
ほとんどの普通の人はそのようになっていて下顎安静位と習慣性の咬合位は一致しています。
しかし実際にはこの患者さんは普段、下の写真のように上下の歯を噛み合わせていますが、このように噛み合わせている最中は「下あご」の周辺の筋肉は安静ではない緊張した状態に置かれています。無理を強いられる状態なのです。

実際に噛み締める度に不快感を感じることもあるはずです。歯を咬み合わせないで口を軽く開けていたほうが楽なはずです。

初診時の患者さんの噛み合わせの状態(習慣性咬合位)

そのように上下の歯が噛み合う度に筋肉が安静を保つことができない位置に「下あご」を移動させらる噛み合わせは筋肉に負担を強いることになります。筋肉が緊張する原因となります。
一見異常に見える上の石膏模型の写真は、実は「下あご」の位置は正常(下顎安静位)で歯の噛み合わせが異常な状態を示しています。
また一見正常に見えるこの患者さんの普段の噛み合わせが実は異常であるということは「下あご」を安静位に導いてみないと知ることはできません。
これが噛み合わせが悪いということの本当の意味を具体的に示しています。
悪い噛み合わせを治すということは、正常な「下あご」の位置(下顎安静位)で上下の歯が噛み合うようにする治療のことです。
下顎安静位がみつかれば「下あご」を下顎安静位に導いてそこで「下あご」を保持するようにすると、「下あご」の周辺の筋肉は安静を保つことができて緊張しなくなり不定愁訴は消えます。

下の写真は下顎安静位を保つためのオーソティックを装着しているところを示しています。

透明な樹脂で作られているので見えにくいかもしれませんが下顎安静位に下顎を保持しているところを見ていただけると思います。

下の写真は「下のあご」に装着して使っていただくオーソティックを示しています。

オーソティックにはこの写真のように取り外しができる可撤式のものと歯の上に接着してしまう固定式のものがあります。

オーソティック装着後の症状の変化

オーソティック装着後19日目の症状の変化
頭痛はまだあるが身体が軽くなった
以前より良く眠れるようになった
背中は良くなったが腰痛が強くなった
全体的には良くなっている
顎関節の左の方がガックンとなった
下顎を後ろに引いてしまう癖がまだある
オーソティック装着後一カ月半後の症状
頭痛はまだある 背中の痛みは気にならなくなってきた
眠りは以前よりさらに改善された

オーソティック装着後1年半後に体調がほぼ改善されたので一次治療を終了することにしました。

 

K7のデータも下の図のようにオーソティックの咬合位が下顎安静位上にとどまっていることを示していますので、この顎位で二次治療をおこなうこができます。(初診の時にあった赤い三角がなくなっています)

二次治療は相談の上矯正治療で行うことにしました。この患者さんのお口の中は殆ど補綴治療がなされていないので補綴治療はしたくないというお互いの意見が一致したのでそれに従いました。

 

3-3.二次治療

二次治療は下顎安静が見つかってその「下あご」の位置で不定愁訴を消すことができたことが確認されてから行います。
二次治療は治療の侵襲が大きな治療ですから、不定愁訴がなくなることが保証されないかぎり行ってはならない治療です。
それは医療倫理上当然のことです。
二次治療の目的は下の写真のように下顎安静位で上下の歯が噛み合っていない状態を噛みあうようにする治療ですが、その方法には歯に被せ物をして歯を高くして噛み合うようにする方法と、矯正治療で歯を動かして噛み合うようにする方法があります。

この患者さんは45歳とまだ若く、下の写真のように歯の治療痕も少なく、比較的奇麗な状態でさらに歯並びが多少乱れているところもあるようなので、矯正治療による咬合再構成をおこなうことになりました。

 

矯正治療開始

矯正治療は下顎安静位を見失わないようにするために「下のあご」にオーソティックを装着した状態で開始しました。

約2カ月後に上の歯の歯並びが整ってきたところでオーソティックを「上のあご」に新しく作り下顎安静位が失われないようにして下の歯の矯正を始めました。

このように新たな顎位(下顎安静位)で上下の歯が噛み合うようにする矯正治療はこれまでに行われてこなかった治療なので顎位を維持するために上下を別々に治療しなければなりません。
そのため治療に要する治療期間は長くなります。

約一年後、上下の歯列も整ってきて顎位も安定してきました。

さらに一年後上下の噛み合わせはさらに安定してきました。もちろん不定愁訴は再発していません。

それからさらに一年後に装置を外して矯正治療を終了しました。
治療期間は5年を費やしてしまいました。
もっと治療期間を短縮するためにはどうすればよいかを反省をこめて考慮中です。

 

まとめ

矯正治療は元の歯を削ったり被せたりしない治療法なので歯に優しい治療法です。
しかし「あご」の位置を正確に位置づける手段としては未解決な部分が多い治療法でもあります。

最近ではマウスピースをつかった歯列矯正法が急速に発展してきておりますので、これらの問題は一挙に解決されるかもしれません。

 



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